第二章  城崎市タウンガイド

3.御堂グループ概観

 現在では世界的大企業に成長している御堂グループは、戦後に元軍人の御堂源重郎氏が興しました。発展の基礎となったのは城崎市に建設した食品工場で、販路の拡大に合わせて流通業、百貨店経営などに事業を拡大、戦後財閥の一角を占めるまでになりました。源重郎氏は一時、経団連の専務理事などの要職を務めたこともあります。

◆御堂源重郎(みどう・げんじゅうろう):御堂グループの創業者、前理事長。故人。中国(台湾・福建方面)と交易していた商家の次男坊で退役軍人。その人脈などを活かして戦後、事業を興し、御堂財閥を築き上げるに至る。同グループの創業の地である城崎市に対して恩返しをする意味も含めて、城崎学園を設置したことは有名。「自由と自主と自己責任」を標榜して教育を進めてきた。4年前に死去。

 

 4年前に御堂グループ総帥の源重郎氏が死去すると、グループは危機に陥りました。氏には御堂誠一氏と御堂祥二氏という二人の息子がおり、源重郎氏は生前から誠一氏にグループ企業の社長職を任せるなどして帝王教育を授けていたのですが、反総帥派の片岡栄介・御堂物流社長らが祥二氏を担ぎ上げて誠一氏に対抗したためです。半年ほど混乱しましたが、結局、誠一氏が事態を収拾し、反総帥派を抑えた後で祥二氏に多数のグループ企業の経営権を譲渡し、代わりに祥二氏が相続したグループの株式を譲り受けて同グループの経営者からオーナーへと立場を変えました。それでも誠一氏は、基幹部門に関しては事実上の人事権などを含めた強大な権限を握っています。また、特筆すべきは城崎学園の理事長職に自ら望んで就任し、学園のみは直接経営に乗り出したことでしょう。

 グループの経営形態としては、持ち株会社としてのグループ本社を設立する計画が水面下で進んでおり、その場合には誠一氏が持ち株会社の社長に就任することが確実視されています。そのため、グループ内の主導権争いが絡み、多少の不安定要因となるのではないかというのが、観測筋のおおむね一致した見方のようです。

◆御堂誠一(みどう・せいいち):源重郎氏の長男、御堂グループ総帥、学園理事長。父と異なり経営の陣頭指揮は執っていないが、財閥全体への影響力は強大。学園に対する教育方針では、源重郎氏と異なり、教育者の視点を重視して「責任ある社会人の育成」を主眼としており、一種の管理教育に傾倒しつつある。特に中等部や高等部で顕著。ただ、一人娘のさやか嬢に対しては、やや甘い親の顔を覗かせる。

◆御堂祥二(みどう・しょうじ):源重郎氏の次男、誠一氏の弟。御堂物流社長、御堂重工社主、ミドー・バイオエンジニアリング社長など。グループ企業の経営の少なくない部分を受け持ち、誠一氏ほどではないにしろ、グループ全体に影響力を持つ。そのため、反総帥派に担がれやすいが、少なくとも今のところは兄に反旗を翻す様子は見せていない。

◆片岡栄介(かたおか・えいすけ):ミドー・バイオエンジニアリング札幌事業所長。御堂源重郎氏が死去した際に祥二氏を担いで誠一氏に抗したが失敗、左遷された。マネージメントの才能はあるためにグループから追放することはできなかったらしい。現在でも反総帥派の顔役と噂される。一応、今のところ表立っておかしな動きは見せていない。

 

 城崎グループは現在では、多くの業種に進出しており、多種多様な研究・開発を行っています。城崎大学における「産学協調」はそうした場の一つであり、城崎市は研究拠点としての意味を持っているとも言えましょう。

 城崎市が御堂グループに対して持つ重要な意味の一つは、御堂グループ総帥・御堂誠一氏とその家族の住居があるという点です。御堂邸には誠一氏の他、妻の初枝女史、娘のさやか嬢、そして多くの居候などが住んでいます。

◆御堂邸:理事長・御堂誠一氏とその家族の住む屋敷。二階建ての洋館。明治の建築をベースに、補修されて使っていたものを源重郎氏の代に譲り受けた。豪奢な応接間などもあるが、通信・情報処理機器などを備えて事務所としても使えるようになっている。部屋数があまりに多いために、誠一氏の発案で居候を受け入れている。多くは書生だが、一部に親の転勤などの事情で一人城崎市に残ることになった高校生などもいる。他にも様々な「特殊な事情」のある人が住み込んでいる。原則としてこうした住み込みの者は家事を手伝うことになっているが、誠一氏の細君である初枝女史が家事好きであることもあってか、それほどの負担ではない。家賃なども安いが、御堂家の人々との個人的な付き合いも要求されるため、アパートや寮のようなつもりで住む者はいない。

◆御堂初枝(みどう・はつえ):理事長・御堂誠一氏の妻。旧姓は綾坂。旧家の出身で、物腰には気品がある。性格は温和。誠一氏とは、親の意向による政略結婚的要素が強かったが、現在では夫にほとんど不満はないように見える。夫とは逆に、娘には多少厳しい面を見せる。育ちに似合わず、家事、特に料理が好き。御堂邸の居候たちの親代わりでもある。

◆御堂さやか(みどう・さやか):御堂誠一氏の一人娘、高等部2年生。諸般の事情から、公立中学に通っていったが高校進学を機に学園へ入学する。学業成績はもともと優秀な方で、高等部入試も問題なく通過したのだが、「理事長令嬢」ということもあり、スクープ倶楽部が興味本位で「不正入試疑惑」と書き立てた。また、理事会との関係が険悪化する生徒会もさやかを危険視しているなど、いわれのない非難を受けることが多い。

 

 

 

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