1.城崎市概観
城崎市は、太平洋に面した中規模の港湾都市です。市の財政を潤わせているのは城崎市を発祥の地として、現在では世界的な大企業に発展した御堂グループからの直接・間接の様々な税収入です。系列・下請けなどの中小企業も多数に上り、直接の取引のない商店などでも顧客のある程度が同グループの社員とその家族などに占められており、地域経済に対する御堂グループの存在感は圧倒的なものがあります。このため市内においては御堂グループ総帥・御堂誠一氏らグループ有力者の発言力は市長らを軽く上回ります。
現在、御堂グループは経営機能の中枢を東京をはじめとする世界の主要都市に移転しており、城崎市には経営中枢としては御堂家の本邸があるだけです。御堂グループは、社員に対する福利厚生の一環として市の住環境整備に力を入れており、業務移転のために不用になった社宅を市営住宅として廉価で払い下げるなどしています。また、市と協力して公園などを積極的に設置してもいます。
城崎市は世界的大企業の根拠地の一つとして、周辺の都市と比べると発展してきています。人口だけを見るとそれほどでもありませんが、それは市の面積自体があまり大きくないためで、北隣の白岡市などを包含した「城崎=御堂グループ経済圏」全体の人口は県内の他の経済圏と比べても遜色ありません。
市街地は城崎駅を中心に広がっていますが、名古屋や京都のような大都市と比べると市街地自体の広がりはいま一つです。市内の大部分は、戦前からの住民の民家で、ために御堂グループの工場などの労働者は、白岡市寄りの集合住宅や、工場敷地内の社員寮に住んでいます。最近、生産拠点移転などに伴い労働力を削減した際に、社員寮などはおおむね撤去しました。本来は社員寮の「移転」計画だったのですが、移転先予定地は「西大野ニュータウン」として御堂グループの支援のもとに市のプロジェクトに組み入れられ、3年ほど前に完成しています。
交通の面でいうと、JR線の駅である城崎駅には新快速はいうまでもなく、特急も止まります(新幹線は止まりません)。高速道路は市内を通りませんが、北隣の白岡市に白岡インターがあり、利用に不都合はありません。城崎港は主として貿易港ですが、一部フェリーも発着します。市内の交通には、ローカル線として城崎鉄道の白岡線と城港線があるほか、城崎鉄道バスが走っています。
◆城崎港:国際貿易港。城崎湾は自然の良港で、御堂グループの製品を扱って発展した。最近、プール施設などを整えた「みなと公園」が完成して、週末には家族連れで賑わう。
◆市内交通網:市内交通網の基本になっているのは、JR線と城鉄白岡線。JRは市域を東西に貫く形で走っており、市南東部に浜磯駅、南西部に城崎駅がある。城崎駅から東北東方向に走っているのが城鉄白岡線。白岡線は白城山の東側から白岡市に抜けてさらに北に続く。また、城崎駅の南にある城崎港までは城港線が通っている。これに城鉄バスが不足を補う形で走っている。なお、交通量の多い道路としては、大ざっぱに言ってJR線や城鉄白岡線に併走する国道などが挙げられる。
先代の石島喜代三市長の時代に、「市街地の再整備に関する条例」を制定、続けて「新美観都市宣言」を発表し、市内全域の再開発構想に着手しました。たとえばいわゆる「三点セット(滑り台+ジャングルジム+砂場)」ではない、緑との調和を重視した中規模以上の公園や、市街地(駅前)の歩道や歩道橋を、統一された都市美観計画のもとに再設置したりといった施策が採られ、市街地と重点地区は美しく生まれ変わりました。西大野ニュータウンもその一つです。これらの開発は、いうまでもないかとは思いますがバブル期に実施あるいは着工したものです。
◆西大野ニュータウン:港湾地区の工場に隣接した社宅が手狭になった御堂グループが、移転先として目を付けたのが当時開発の進んでいなかった西大野地区。周辺の土地を買い占め、労組との交渉を進めながら青写真が完成した頃に、生産拠点の海外を含めた移転計画が本格化し、西大野新社宅構想はそっくり市に払い下げられ、新美観都市構想に組み込まれた。こうして完成した西大野ニュータウンは地区内に大きな自然公園も整えられ、バス停もできるなど住環境としてはかなり高レベルのものになった。ただし、完成したときにはバブルが弾けて不況の真っ直中であったために、入居者があまり集まらず、御堂グループが社員用に確保した分を含めても入居率はいまだに九割を切っている。
城崎駅周辺は地方都市としてそれなりの活気があります。城大生を含めて若者が出入りするような小粋な店などもあります。
城崎駅を利用するのは、当然学園生徒ばかりではありません。登下校の時間帯には、他校生とすれ違うこともままあります。港陽高校は、そんな他校の一つです。
◆県立港陽高校:城崎港地区に所在する県立高校。商業科が併設されており、進学率は低め。一部に素行の悪い生徒がおり、ときどき不祥事を起こす。学園生徒とのトラブルも起こっており、当局は対応に苦慮している。
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