8.学友たち
個性的なのは教師ばかりではありません。むしろ、より個性的なのは生徒たちだと言ってよいでしょう。そんな個性的な生徒たちの、ほんの一握りを紹介します。
◆青森貴弘(あおもり・たかひろ):生徒会長、2年生。入学当初は化学部に所属していたが、生徒会活動を始めて退部。会長としては基本的に調整型だが、やや理が勝ちすぎて感情面までフォローできないきらいがある。理事会の管理強化の方針に真っ向から異を唱え、理事会に噛みつかせるために雑誌研を養っていると噂される。どうも策謀家と取られているらしい。長身に縁なしの眼鏡。
◆芦田剛(あしだ・つよし):桔梗委員、2年生。成績は上位、面倒見がよく信頼されている。だが実際には他人が自分をどう見ているかばかり気にする小心者で、嫌われないように必死の努力をしている。表面的に仲良くする人は多いが友人は少ない。報道で自分を悪し様に言われることを極度に恐れ、スクープ倶楽部や新聞部とは距離を置いている。自分の考えなどを明言したり、詳しい言及を避けるクセがある。
◆佐々木直彦(ささき・なおひこ):放送部長、2年生。中等部からの青森の親友で、放送部をとりまとめて生徒会活動を助けている。彼自身はディレクター志望で、桔梗祭の裏方なども全て自分の身になると考えているらしい。雑誌研と新聞部の間で過熱する報道合戦に放送部が参入することには否定的。口が堅く、親身になってくれることから、青森を始め彼に色々と相談する人も多い。頭も切れ、何よりも雑用なども嫌がらずにする性格から、後輩の信望も厚い。小太りで所作がコミカル。書類行政にも通暁し、議会の一言居士の一人。
◆白峰亜耶(しらみね・あや):フェンシング部、3年生。城高の銀獅子、と呼ばれた猛者で、県で優勝、全国でも屈指のレベル。スタイルもよく、やや男勝りな性格。彼女のお陰でフェンシング部は一時部員を急増させた。正義感も強く、2年生の頃に風紀委員を務めていたときには、一部生徒を恐れさせた。教師に対しても物怖じせず発言したため、風紀委員長に推す声もあったが固辞。下級生や中等部の女子生徒に熱烈なファンが多い。
◆刀根偵紀(とね・さだのり):風紀委員、2年生。平和を愛する好青年。喧嘩や揉め事が大嫌いだが、本人が一番揉め事を起こしている。しかしそのことに彼は気付いていない。その為、普段は彼に事件が任せられることはないが、一大事が起これば最も頼りになる男。どんな些細な事件でも、自分の担当は常に学園を揺るがす大事件の如く大騒ぎし、自分でなければどうにもならぬ難事件と思いこむ。
◆高倉大一郎(たかくら・だいいちろう):3年生。3年生を中心にした不良グループのボス的存在で、港陽高校の権田グループとも親交がある。御堂さやかに、懸想したのかそれとも別の理由からか、ちょっかいを出そうとしたことがある。学園の所在する東宮前地区を勢力圏として抑えたいという思いを抱いているともいう。かつて、刀根偵紀がそのグループに所属していた。
◆大須賀宏雄(おおすが・ひろお):2年生。全校的に有名な総合エンターテイナー集団、「棚からバタフライ(棚バタ)」のリーダー。大須賀自身はプランナー、脚本家、プロデューサーの才を持つ希有な人物。昨年の桔梗祭で「根倉昌介(ねくら・しょうすけ)」の役で電撃デビューを果たし、今年度の新歓でも同じキャラクターを演じた。ために下級生などは彼を「根倉先輩」と呼ぶ。根倉は根暗で陰湿なキャラクターだが、本人は明るく社交的。
◆枕田慎一(まくらだ・しんいち):2年生。「棚からバタフライ」所属。アート、研究などと称して、コンピューター同好会など様々な部活動、同好会に出入りしている。その活動は極めて前衛的。最近は大型ゴミ収集に凝っており、その部品でロボット作品を作ると公言している。姉の枕田智子(3年生)は恋い多き女性として知られる。
◆夏目ひさお(なつめ・ひさお):2年生。岸田哲朗とコンビを組むムードメーカー。クイズ研究会のエースで、昨年は先輩と組んで高校生クイズ全国大会に出場。ラ・サールに負けて涙をのむ。中国文化研究会(麻雀同好会)の会長も務め、ガンパイとツバメ返しを使う。ただし実力はそれなり。ツキのみで和がることも。明朗快活な性格。度胸もありリーダーシップを取るタイプ。ただ、少しいい加減なところは困りもの。
◆蘭紅龍(ラン・ホンロン):2年生、男。中国人。整った顔立ちの美少年。常に落ち着いた性格であまり騒いだり飾ったりを好まない、が他人がするのはさして気にしないらしい。何事にも動ぜず、口を開くと刃のように斬れる台詞が飛んでくる。中国拳法の達人で、無手で白峰と互角に渡り合う剛の者で、「紅牙」の異名を持つ風紀委員。
◆蘭紫鈴(ラン・シーリン):2年生。半ば名物と化した元気いっぱい中国娘。その爆発的な言動から「爆裂仙女」の異名を持つ。いつも脳天気かつマイペース。雑技団で鍛えた軽い身のこなしを活かして体操部に所属。蘭紅龍の双子の妹で、兄譲りの拳法も得意。
◆黒沢明彦(くろさわ・あきひこ):2年生。背は低めで、痩せた身体。分厚い眼鏡を掛けており、少し暗い雰囲気を漂わす。「不思議な」ことに強い興味を持っており、いつも学校の図書館でオカルト雑誌や怪しげな文字の書かれた分厚い本を読んでいる。不思議なことについての噂で盛り上がっているところに顔を出し、「それにはあの悪魔がかかわっているに違いない」などと、常人には意味不明のことを口にする。
◆高尾沢ケンジ(たかおざわ・けんじ):2年生。不思議なことをすべてプラズマの仕業にする男。綽名は「プラズマ」。数学の授業の際、平行四辺形の証明をプラズマ理論により行ったことはあまりに有名。彼によれば、幽霊とはプラズマ現象により、空間の地場に記憶された人間の脳内シナプスの運動が発現したものである、らしい。
◆相川萌(あいかわ・もえ):生物部員、2年生。セミロングの柔らかな髪、少し背が低く高校生の割に子供っぽい印象を与える。鳥に対して深い興味を抱いており、鳥と友達のように接している。まるで本当に言葉が通じるかのように、小鳥に話し掛ける彼女の姿を見かけることも多い。
◆勅使河原操(てしがわら・みさお):2年生。倫理、道徳にうるさく、非常識・非倫理的な行動を語気鋭くたしなめる。自分が風紀委員に指名されないことを不満に思っている。公平にして無私、はいいのだが、厳しすぎるのである。当然自分自身に対しても厳しく道徳律を課しており、その為に彼女の行動は、他人に厳しすぎるのを除けば非の打ち所を見つけるのが難しい。髪型はセミロングで眼鏡を着用。
◆織原蓮耶(おりはら・れんや):2年生、コンピューター同好会副会長。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。女子生徒から人気があるが、心に決めた人でもいるのか、その手の話を全て断っている。実は、コンピューターゲームに登場する少女に恋しているためなのだが、このことはほとんど知られていない。
◆千葉啓吾(ちば・けいご):2年生、新聞部長。やや小柄で肩幅も狭く、一見すると弱気そうに見える。だが、実際には積極的な性格の持ち主で、スクープ倶楽部に対抗するため、読者受けを最重視した紙面構成へシフトする「部数倍増計画」を提唱、推進している。しかし、新聞部の全てが千葉の方針に賛成しているわけではないらしい。
◆長野涼子(ながの・りょうこ):2年生。スクープ倶楽部の優秀な記者。長身、長髪の少女で、物腰は静か。身のこなしは軽やかで頭も切れ、言葉巧み。広くて深い独自の情報網を持っており、学園内の様々なことがらに精通する。そんな彼女を駆り立てているのは、薄っぺらな功名心でもマスコミの使命感でもないらしい。
◆高林敦(たかばやし・あつし):スクープ倶楽部記者。功名心の強い男だが、おっちょこちょい。常にスクープを探しているかが、未だモノにしたことがない。編集部からはあまり戦力としてアテにされていない。口が軽いところがあるのが困り者。
◆城之内香奈子(じょうのうち・かなこ):2年生、演劇部の主力女優。昨年度「ミス城高」。容姿は確かにかなりのもので演技力も超高校生級だが、性格面に難あり。プライドが高い上に嫉妬心が強い。一方で、彼女に従う者や彼女を尊敬する者に対しては際限なく優しい。もっとも、性格の暗黒面は表に出さないように細心の注意を払っており、厄介ごとはほとんど取り巻きが処理する。
◆柏木さゆり(かしわぎ・さゆり):2年生、演劇部員。香奈子の取り巻き。香奈子に心の底から心酔しているらしい。香奈子の性格の悪いところはほとんど見ていないようで、香奈子を自らの範としている。香奈子自身が何も言わなくても、香奈子のために目障りな人に嫌がらせをしたり、「ミス城高」では票のとりまとめをしたりしている。
◆星崎美空(ほしざき・みそら):2年生。占いを得意とする少女。占いに関しては、星占い、血液型占いからタロット、水晶玉、四柱推命、八卦に至るまでこなせないものはない。彼女の占いはよく当たると、クラスの女子の間では評判。どちらかといえば物静かな部類に入るが、無口というわけではない。背はやや低めで、髪は後ろに流して紺のカチューシャで止めている。
◆岸田哲郎(きしだ・てつお):2年生。軽薄、を人型に固めて制服を着せたような男。クラスのムードメーカー、というのは誉めすぎ。まぁいろいろ、色々やる男。終始口許から笑みを絶やさないタイプ、というかお気楽極楽な人。中国文化研究会に所属しているが、夏目にはほとんど負けている。友人は多いが親友は少ない。天然パーマで標準身長の三枚目。
◆三輪鈴音(みわ・すずね):箕輪神社の宮司の孫娘。人当たりがよく、面倒見も良いため、友人が多い。過去に何かあったのか、不思議なことに対していくらかの理解があるような言動をする。黒髪のロングストレートで、眼鏡をかけている。
◆吉野朋加(よしの・ともか):1年生。実力派女優、吉野いずみの娘で小学生の頃からチャイドルとしてブラウン管に登場してきた。本年度、城崎学園の高等部入試に合格した一年生だが、背が低くその容貌はどう贔屓目にみても中学一年生。髪は長く、後ろに流して白のヘアバンドで止めている。TVドラマなどで人気がある演技派。役年齢は常に実年齢を下回る。
◆峰野亮一(みねの・りょういち):2年生。吉野朋加ファンクラブの会員で、城崎学園支部の創設者。熱狂的な吉野ファン。彼女に不当な不利益が及ばないよう学園内各方面に働きかけているが、実際には吉野に及ぶ「不当な不利益」のほとんどは彼らの活動が直接間接の原因である。
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