3.部活動と同好会
生徒会活動が学園の自由と自主を守っているといっても、彼らの活動は一般生徒の間ではさほど強く認識されているものではありません。彼らは一種の裏方なのです。
一般生徒が「自由」「自主」を強く意識するのは、たとえば部活動などです。練習日程や技術の伝達などは、ほぼ生徒主体で行われています。運動部はもちろんのこと、文化部もそれぞれに個性的な活動を行っています。また、正式な部活動ではない「同好会」も数多く存在し、学園生活を幅のあるものにしています。
部活動(部組織)とは、様々の運動部や文化部の総称ですが、これらは生徒会予算から「部予算」を支給されています。しかし、ほとんどの部ではこの支給だけでは足らず、OBからの寄付や部員からの徴収によって不足分が賄われています。もっとも、こうした台所事情を知るのは各部の部長クラスだけで、多くの生徒は部活が生徒会に組み込まれていることを知りません。城崎学園では部活動はそれなりに活発で、一部運動部や大手文化部などの中には、全国大会レベルの成績を残す部もあります。
部活動と違い、完全に生徒会から独立しているのが同好会や研究会と呼ばれる組織(以下、同好会で統一)です。同好会については「同好会規定」というものが存在し、2学年以上にわたり5人以上の参加があれば、活動が認められます。もっとも、予算が下りるわけでもなく、活動スペースが確保されるわけでもありません(ただし、スペースを自力で確保すれば保証はしてもらえます)ので、さして公認されるメリットはありません。未公認・非公認の同好会も多数存在しているものと思われます。なお、部の要件は2学年以上にわたり10人以上の参加者と、顧問となる教員がいることですが、一度部として認められれば人数規定を下回ってもよく、また顧問は職員会が毎年つけてくれるという「既得権」的な性質を持ちます。
学園には様々な部活や同好会が存在します。以下では、特徴的ないくつかの部活や同好会について見てみましょう。
◆雑誌研究会(スクープ倶楽部):『スクープ倶楽部』という名の雑誌を製作・販売している同好会。内容はいわゆる写真週刊誌の類いに近く、読者の好奇心を煽るようなものとなっている。印刷は学校の印刷室で行われ、製本は手作業とローコストながら、制作費のすべては販売収入でまかなわれている。取材方法がえげつないとして、一部の人には不評。正式には「雑誌研究会」だが、一般には出版物の名をとって「スクープ倶楽部」と呼ばれる。会員数は十名程度だが、投稿記者の数はその数倍に及ぶ。
◆新聞部:最近スクープ倶楽部に押されて元気のない新聞部。『城高新聞』を発行。スクープ倶楽部と比べると幾分紳士的。ただ、最近はあまりに発行部数の落ち込みが激しいことから、部長の千葉啓吾が「部数倍増計画」を唱え、紙面構成を徐々にスクープ倶楽部に近づけつつある。
◆演劇部:旧城崎高校以来の伝統ある部。スポットライトの使い方をはじめとする、舞台設備の駆使については専門家で、桔梗祭でも活躍する。規模は中の上。年数回、自作の脚本などによる公演を行い、県レベルの大会でもしばしば入選する。
◆放送部:部の体裁を取っているが、活動の半ばは委員会に近い。校内の放送事務の多くを取り仕切っているのは彼らである。実際、放送機器を使いこなせるのは職員側では放送部顧問を含めてごく数名に過ぎず、ために職員側や執行部から大事にされている。数年前、桔梗祭など行事の際の一般生徒のマイクなど放送機材の扱いが手荒だとして、当時の部長が桔梗祭への関与を見合わせる発言をしたときには、生徒会長や桔梗委員長が再三にわたり部室に出向いて翻意を促した。全国レベルの大会にもしばしば出場し、よい成績を収めている。
◆クイズ同好会:高校生クイズ出場を活動目標として掲げる同好会。全国大会へ進出したこともある。桔梗祭で毎年クイズ大会を主催。翌年の高校生クイズへの出場オーディションと位置づけているらしく、上位入賞者には同研究会から熱心な勧誘がかかる。この大会はただの一問一答式クイズではなく、高校生クイズ準拠の「知力・体力・時の運」を競う内容となっている。
◆中国文化研究会:中国四千年の文化についての理解を深め、国際人としての資質を養う同好会、というのは建前で、実体は麻雀同好会。過去に一度は公認されていたが、風紀委員の摘発で活動の実体が明るみになって公認取消処分を受けた。現在は有志によって密かに活動が続けられている。
◆フェンシング部:最近、急に大きくなった運動部。現3年生の白峰亜耶が「城崎学園の銀獅子」の異名をとるまでの活躍をしたことから、彼女に憧れて入部志望者が殺到したらしい。風紀委員を数名抱えている。
◆バドミントン部:アットホームな雰囲気の運動部。規模や大会での実績などは明らかに弱小の部類に属す。だが、所属の男子部員の多くが学園最大の総合エンターテイナー集団「棚からバタフライ」に属していることで有名。
部活動、同好会の枠組みにとらわれない生徒の自主的な活動も多くあります。学園内に多数存在する高校生バンドや、特殊な例としては総合エンターテイナー集団「棚からバタフライ」などです。
◆Snackies!:数ある校内バンドの中で、最も有名なもの。はじめはコピーバンドだったが、現在は自分たちで作詞・作曲もこなす。最近は時代のニーズに応えるため、ビジュアル系への脱皮を図っている。桔梗祭などイベントが近づくと、スタジオ☆メルクで夜遅くまで練習している。
◆棚からバタフライ:学園最大の総合エンターテイナー集団。リーダーは2年生の大須賀宏雄。大須賀の所属した旧1−Dとバドミントン部を母胎に形成されており、桔梗祭などの機会に寸劇を披露したり、謎の写真集を発表したりして学園生活に潤いを与えている。十数名のメンバーの中には、カメラマンや武道家、手品師など一芸に秀でた人物が多い。
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