2.生徒会組織と委員会
前理事長・源重郎氏の「自己責任に裏打ちされた自由と自主性を重んじる」方針のもと、学園(以下、特に注記のない場合は高等部)では生徒に大幅に自治権が認められてきました。そうした環境の中、生徒側にはその「自治」を支えるだけの機構が構成されてきました。生徒会はその最たるものと言っていいでしょう。
生徒会は、高等部と中等部とで別個になっています。生徒会活動の主要な部分を担当するのは、執行部役員達です。生徒会のほとんどの役職は半年任期ですが、執行部役員は任期満了に伴って選挙によって新役員が選ばれます。この生徒会選挙を取り仕切るのが選挙管理委員会です。
◆生徒会執行部:半年ごとの選挙によって選出される生徒会役員により構成。生徒会会則によれば、生徒会のすべての執行権を有する機関。各種行事の企画運営や予算編成、学園生活における生徒の福利向上のための諸施策を執り行う。公選とはいえ、一部の生徒が継続して役職に就くことが多く、一種のサロン的性格を持つ。近年は新理事長のもと、管理強化に向かいつつある理事会及び職員会に対し対立姿勢を強めている。
◆選挙管理委員会:生徒議会の議員から選出され、年2回の生徒会選挙を取り仕切る。といっても、委員の任期は半年のため、実際に扱うのは1回。近年、生徒会役員の固定化と共に立候補者が不足する傾向にあり、期限までに立候補者が出揃わない場合、選挙管理委員長が職を辞して立候補することが慣例となっている。そのためもあってか、生徒会人脈に近い生徒が委員長を務めることが多い。
執行部の下に、各種生徒会業務を執り行う、執行委員会が置かれています。文化・体育・集会・図書・広報・厚生などです。それぞれ、各クラス1名の委員によって構成されています。ただし、ほとんどの委員会は、高等部全体での活動よりも委員各人が各クラスに於いて何らかの役割を果たす、という側面が強く、「生徒会」への帰属意識は希薄です。
◆図書委員会:他の委員会と違い、図書館の運営という明確な仕事が与えられているために責任感と連帯感が強い。職員側で図書館を所管する司書は大学付属図書館の管理局の一員という形式で、そのためか高等部・中等部の図書委員も大学図書館へ足を運ぶ者が多い。桔梗祭では研究発表をしたりと仕事量が多く、まじめな委員は部活に参加できないほどである。
◆厚生委員会:いわゆる保健委員。執行部だけでなく、養護教諭・川越夏美の指示にも従うことになっている。図書委員会ほど高度に組織化されているわけではないが、生徒に人気の高い川越先生の手伝いができる委員会とあって、意外と希望者が多い。
また、執行委員会とは位置づけの異なるものとして、風紀委員会があります。こちらはクラスごとの定員制を採っておらず、その任命は生徒会長の専権事項となっています。風紀委員会は学園の生徒自治の仕組みの最も重要な部分の一つです。
◆風紀委員会:生徒の風紀取り締まりや喧嘩の仲裁、紛争の未然防止を行う。本来職員側の権限だったものを過去の執行部が交渉により生徒自治に移行させた。委員は腕章をつけ、様々な職務特権を享受する。風紀委員の任命権は会長に、罷免権は会長、風紀委員長と職員会にあり、委員の行動を監査している。現在はおおむねこのシステムが良好に機能しているため、強大な権限を握っていながらも風紀委員は憧憬の的でこそあれ、怨嗟の声などは上がっていない。なお、彼らには「任期」というものが事実上存在しない。
風紀委員は、職員に代わって校内の風紀取り締まりを行っています。たとえば「服装規定」の「6)その他」の末尾にある「その他、所持品は全て、色彩・質ともに華美でないもの」の「華美」の線引きなどです。
この点を以前は、学校側(職員側)の生活指導部が行っていました。それを現在は生徒会(風紀委員)が取り締まるようになったのです。このことで一般に「華美」とされる範囲は狭まりました。しかし、完全に消えたわけではありません。あまり極端なものがあれば、取り締まらざるを得ないのです。そういったものを見過ごせば、職員側からクレームが付きます。
一方、取り締まりが厳しすぎたり、不公正であったりすれば、生徒たちも黙ってはいないでしょう。風紀委員の任免は生徒会長の専権事項ですが、生徒の不満があるような風紀委員を放置していると、生徒議会などで会長への不信任の声が上がります。生徒会長はこのためもあり、風紀委員のメンバーには常に注意しているのです。
このように「風紀」とは、「自由」と背中合わせの、非常に微妙なものなのです。風紀委員はいわば、「生徒の自由と自主性」という校風を最前線で守っているのだとも言えます。
最近のいわゆる「職員会の締め付け強化」というのはテクニカルには、風紀委員会の取り締まりが甘すぎるとクレームを付けるレベルを職員会が落としてきたことが主なものです。職員会の言うような取り締まりを行えば、今度は生徒の不満が鬱積するのです。
この他にも、風紀委員は喧嘩の仲裁や、捜し物の捜索といった、様々な仕事をこなします。こうした仕事をいちいちこなしてきたからこそ、風紀委員は尊敬される存在となったのです。
風紀委員にはこうした仕事をこなすために、授業を公然と抜け出す権利や、部室などのプライベートスペースに立ち入る権利、証拠物件の押収、必要最低限の範囲で実力行使をする権利などが認められています。もちろん、権利を濫用すれば罷免などの処分が待っています。
なお、風紀委員会という委員全体を統轄した組織は、有名無実です。委員長は会長と同じく、委員を統率する権限を有しますが、実際には委員各個人がその責任感において様々な「問題」の解決に自主的に当たっているというのが現状です。風紀委員長はいわば一般生徒向けの窓口であり、理想的風紀委員像の広告塔と言っていいでしょう。
行事の企画や、新しい施策など、全校の多くの人間に関わる問題では、執行部はその方針を生徒議会に説明し、議会の承認を得なくてはなりません。
◆生徒議会:各クラス2名の代議員からなる生徒会の意思決定機関。生徒会執行部や桔梗委員会などの提出する案件を審議し、必要と認める場合にはこれを修正する。会則の定めでは議員にも議案提出権はあるが、これは一般に行われていない。生徒議会は議案がある際、昼休みに適宜行われる。議事進行は「議会会則」に従うが、動議や修正案など難解な項目が多く、一部に議会慣例に習熟した一言居士がいる。
こうした常設の機関の他に、学園の文化祭である「桔梗祭」を企画・運営する桔梗委員会というものがあります。桔梗祭は中等部と共催となっており、中等部にも桔梗委員会が設置されます。
◆桔梗委員会:生徒会執行部から半ば以上独立した特設委員会。基本的に前期のみ設置。中等部と高等部にそれぞれ設置されるが、上部組織である十人委員会は両桔梗委員会を束ねる。中1〜高2の各クラス1名以上によって編成されるが、基本的に参加は自由で、クラスごとの上限人数も定められていない。桔梗祭当日は桔梗のマークの入った腕章と名札を着用する。この桔梗は、校章とはデザインが異なる。
◆十人委員会:中高の両桔梗委員会の中から互選により、各5名の常任委員を選出し、この十名によって「常任委員会」が組織される。「十人委員会」は俗称。十人委員会は桔梗祭に対しては生徒会執行部と同等以上の権限を有し、桔梗祭全体の大枠の設定や関係諸団体の利害調整、予算配分などを行う。桔梗祭当日の実務に深く関与する放送・吹奏楽・演劇の三部が十人委員会のうち高等部の3つの席を占めることは慣例になっている。高等部から委員長、中等部から副委員長を選出する。
4月に桔梗委員会、続いて十人委員会が発足すると、十人委員会はまず当該年度の桔梗祭のアウトラインの作成に入ります。日程等については学校側の提示をほぼそのまま受け入れることになりますが、毎年9月の中旬に土日の2日間行われることが慣例です。15日の敬老の日の位置によっては、これと絡めることも行われます。桔梗祭2日間のおおよそのタイムスケジュールや、桔梗委員会が直接手がける企画、諸団体の参加ガイドラインを作成し、これを桔梗委員会総会、さらに生徒議会に諮ります。
◆桔梗委員会総会:桔梗委員全員が一堂に会し、桔梗祭全体の方針などについて十人委員会の説明を聞き、それに意見を述べる場。しかし桔梗委員のほとんどは十人委員会の方針を受け入れるため、ここ数年、総会で異論が唱えられたことはない(表現等への質問を除く)。
中高の議会の決定が異なる場合は両議会の議長団交渉などで妥協点を探り、再採決となります。もっとも、中等部の議会は高等部ほど発達していませんので、多くは高等部側の主導で進むことになります。議会の承認を得ると、桔梗委員会は実施に向かって動き出します。議会の承認を必要とする実施案は大枠だけであり、施行細則や施行裁量など、多くの権限が桔梗委員会(十人委員会)の手元に残ります。
委員会の本部が実施する企画は、著名人を招待しての講演会やショーをはじめとする少々のもので、ほとんどは校内諸団体及び個人による企画や発表となります。委員会の仕事は、こうした諸団体の希望を聞いて、企画の場所や時間を調整することです。体育館を使って演奏会や公演を行う吹奏楽部や演劇部は、こうした「調整」で有利になるように、十人委員会のポストを維持しているのです。もちろんその他にも、桔梗祭全般にわたって放送部を加えた三部が持つノウハウが重要な要素となるからでもありますが。
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