「妹の日」記念シナリオ リプレイ
第14幕 揺れる瀬戸家
GM:では、笑美子。仕事が終わったところ。
今井笑美子:はぁー(ため息)。ドキドキしつつも帰ります。
GM:家に帰るんですか?
笑美子:家以外のどこに……。あ、病院か。もはや病院は……。
瀬戸怜花:遅すぎますよ。病院の面会は5時までですよ。
笑美子:だよね。家。私の帰る場所は家しかないんだから。
GM:では、あなたが家に帰ると、留守電が入っています。
木村誠二:ピカピカ、ピカピカ……。
瀬戸愁也:あの赤い光っていやなんだよ。
笑美子:特に暗いところでいきなり光ってるヤツね。
GM:「白岡市民病院の者ですが。幸香さんの容態が急変しましたので、出来るだけ早く病院の方に来ていただけませんでしょうか」という留守電が、あなたが家に着く5分前の時間で入っています。
笑美子:5分前! うーん、それは……。電話している余裕はない、また、タクシーを……。
誠二:タクシー呼んでる間に電話するんじゃないの?
笑美子:そう……? いや、どっちが早いんだろう。
誠二:タクシーって、そうそうすぐには来ないよ。
笑美子:いや、電話でタクシー呼ぶのと、どこか大きい通りに出てつかまえるのと。
GM:あなたの家のある場所次第ですが、まぁ、電話で呼ぶ方が早いでしょうな。
笑美子:それなら、病院に電話しますね。
誠二:病院に電話するの?
笑美子:しない?
誠二:してもいいけど。
GM:まぁ、病院にも電話するでしょう。「はい、白岡市民病院です」
笑美子:「もしもし、えーと……」
GM:まぁ、担当の人に電話回してもらえるよ。
笑美子:「今井ですけど、たったいま家に帰りまして、留守電聞きましたので、至急向かいます」
GM:「はい、急いできてあげて下さい」
笑美子:「分かりました」よし。タクシー早く来い……。
誠二:嘘! (愁也を)呼ばないの?
怜花:呼ばないのか。かなり不思議。
笑美子:そう?
怜花:(幸香の容態が)急変したんでしょ?
愁也:そこの判断は、笑美子に任せるしかない。
笑美子:待てよ……。
GM:あるいは命に関わるかもしれませんので、という趣旨のことも言われている。
誠二:急変、とか言ってよくなったのかも。
笑美子:それは急変とは言わない。
誠二:いや、急変ではあるよ(笑)。
愁也:逆に、よくなった場合は会わせなくていいんだよ。
笑美子:じゃあ、急いで支度しようとして、ポケットに手を入れてメモに気付いた。「どうしよう……」
GM:じゃあ、どうしようか悩んでいるところでこちらのシーンを切ろう。
GM:その間にこちらの家(瀬戸家)の方をやりましょう。帰りの電車の中でひとしきり追及したが、特に何も喋らないんだね、愁也は。
瀬戸愁也:当たり前じゃないですか。誠二とか部外者もいるんですから。
木村誠二:部外者!
愁也:(GM=唯を指して)部外者!
誠二:ただ、プレイヤー的にはナイスキャラ(笑)。
GM:ひとみさんの薫陶を受けていますから。
誠二:さすが。
愁也:あの女(ひとみ)は1回しばいておくか。逆にしばかれそうですけど。
瀬戸怜花:絶対そうなる。
GM:(ひとみ)「えー。女に手をあげるなんて……。男の風上にも置けないわね」
愁也:くっ……。
GM:(ひとみ)「その上、負けてちゃあ」
愁也:負けるのか(笑)。
誠二:恐ろしい女や。
GM:では、浜磯駅に着く。
怜花:「じゃあね、唯ちゃん」
唯(GM):「じゃあ、また」
GM:さて、あと14メートル+αってところですね。3人。
愁也:3人じゃあ、俺は何も言わないぞ。
GM:あと25メートル。
怜花:じゃあ、「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
愁也:「ん?」
怜花:「どこに行ってたの?」
愁也:「だから、人に会いに行ってたんだよ」
怜花:「『どこ』に?」
愁也:「別に場所は……。細かく言った方がいいのか? どこに行ってたって、たいしてかわらんよ」
GM:20メートル。
怜花:「とても私の口から言えないようなところに行ってたのかなぁ……?」
愁也&誠二:「どこや?」(笑)
愁也:「誠二ぃ。ひとみさんにちゃんと言っておいてくれよ。変なこと教えるなって」
誠二:「あぁ、分かった分かった」
愁也:といって、家の前くらいですか?
GM:14メートル。
誠二:なるほど。「んじゃま。俺はここで」
愁也:「おぅ。ひとみさんに『よろしく』言っておいてくれ」(笑)
怜花:「じゃあね、誠ちゃん。ひとみさんによろしくねー」
誠二:じゃあ、別れ際に愁也に、「今度、この件については話してくれるんだろうな?」。
愁也:「そうだな……」
誠二:「じゃあな」
愁也:じゃあ、帰る。ちなみにうちは電気はついていますか?
GM:ああ、電気はねぇ、ついているね。
愁也:じゃあ、14メートルだからさすがに(歩きながら例の話は)言わないわ。すぐ着いちゃうじゃん。
怜花:「あ、お父さん帰ってるんだ」
GM:じゃ、聞き耳チェックだ。
愁也:なにー? なにやっとんねん。(ダイスロール)16。
GM:では、家の中から……。
愁也:皿の割れる音ですか?
GM:そんな音はさすがにしない。怒鳴りあうような声が。
愁也:ぎゃー!
瀬戸愛花(GM):「何よ。それくらいいいじゃないの!」
笑美子:何だ?
愁也:お前は何も分かってないんだ! ドン(机を叩く音)! って感じでしょ?
GM:そんな感じ(笑)。
怜花:あなたこそ何も分かってないじゃない!
笑美子:修羅場だ。
GM:分かってないじゃない、というより、分かってくれてないじゃない、かな。
怜花:ああ、なるほど。
愁也:じゃあ、怜花の方を見て……。
怜花:私はいつ頃から聞こえるんでしょう?
GM:家に入れば分かるけど、愁也が自分だけ聞こえている状況で、どういう状況判断をするかが先だな。
愁也:どうしようかなぁ……。
GM:時間は3秒だ。それ以上動きを止めていると怪しい。
愁也:まぁ、行きます。
GM:扉を開ければ、聞こえます。
怜花:「ただいま」
愛花:「なによ!」
愁也:「怜花、お前ちょっとここで待ってろよ」
怜花:「え?」
愁也:じゃあ、喧嘩している居間の方に入って……。
GM:(笑美子から、電話をかける旨のメモを渡されて)先に聞いておこう。君の家の電話はどこにあるんだ?
愁也:玄関です(即答)。
誠二:あれ(笑)?
愁也:しまった!
一同:(爆笑)
愁也:なんかどんどん、自分で墓穴を掘っているような気が。それを楽しんでいると言えば楽しんでるけど。
誠二:「玄関です」はしかし、突発的事故としか思えないなぁ(笑)。
瀬戸満彦(GM):「無茶を言うなよ!」
愁也:「父さん、母さん」
満彦:「あ……」んっんん(咳払い)。
愁也:「どうしたの、いったい?」
満彦:「まぁ、ちょっとあってな」
GM:と、憮然とした感じで。愛花さんはぷいっと台所の方へ入っていってしまいます。台所に何をしに行くんだろうな?
愁也:(何かを憚るような小声で)ほ、包丁を持ちに……。
一同:(笑)
怜花:ビールを取りにでしょ? そして……(ビール瓶で殴りかかる仕草)
誠二:口論やめてるのに、それはおかしいやろ。
愁也:「父さん、何があったの?」と、問いつめるように聞きますけど。
満彦:「あいつが、無茶なこと言うからさ……」
愁也:「無茶なこ……」
愛花:「無茶じゃないでしょ!」
愁也:「無茶なことって何、父さん」
満彦:「今日一日、一緒にゆっくり過ごしてたら、また、こういう生活をずっとやりたいね、って無茶なことを……」
愛花:(ヒステリックに)「それくらい無茶じゃないでしょ!」
満彦:(声を荒げて)「だから! 俺だって出来るだけそうしてるだろ。休みの日は可能な限り家にいて、家族サービスしてるじゃないか」
GM:そう言うと……。
愁也:か、家族サービス……。
愛花:(半分涙声になってヒステリックに)「サービスなの!? あなたにとってそういうことは」
愁也:「父さんも母さんも、ちょっとやめてよ」といって……。うーん、くそっ。じゃあ、「父さんも、今日は母さんと2人で水入らずで楽しかったんでしょ? 母さんだってそうだったんでしょ?」
GM:2人とも沈黙しておこうか。
愁也:沈黙……。
GM:沈黙しているんだが、そこのところで電話が、鳴る!
愁也:ぎゃー(絶叫)!
誠二:さっきから愁也に波状攻撃がすごい(笑)。
GM:プルルルル。
怜花:カチャ。「はい、もしもし瀬戸です」
笑美子:「もしもし、えーと、今井と申しますけれど、しゅ、愁也さんはいらっしゃいますでしょうか?」
愁也:ゴホ、ゴホ。
怜花:「えーと、いま、ちょっと兄は、取り込んでいるので、要件でしたら、私が伺っておきますけど」
笑美子:「あ、すいません。でしたら後程かけ直します」ガチャ。
誠二:だろうね。
愁也:よかったー。
GM:ほう、そうなったか。
誠二:まぁ、怜花がどう思うかによるけど。
怜花:名前は聞いてますからね。
GM:ところで、あっちがそういう状況での電話なんだから、声色は?
笑美子:えーと、出来る限り普通を装っているけれど……。
GM:じゃあ、共感判定かな。
愁也:演技と共感の対抗ですね。
怜花:「装っている」の部分だけしか分からないと最高ですね(笑)。(ダイスロール)8。
GM:これじゃあ、分からないな。
笑美子:(ダイスロール)12、だね。
GM:じゃあ、特に不審な点はないね。
誠二:ますます怪しいって話もあるな(笑)。
怜花:ますます怪しいですね。
愁也:こんな深夜に、なに電話かけてるんだ、ってことですか?
GM:深夜でもないよ。10時くらいかな。中学生には遅いけど。
笑美子:それなら「夜分遅く申し訳ありません」をつけてたな。
愁也:じゃあ、こっちに戻しますよ。「家族サービスっていうのは言葉のアヤだろ?」
GM:と、取り持とうとするわけだな。
愁也:はい。
満彦:「さっきの電話、何だったんだ?」
愁也:取り持って、何とか喧嘩は収まったんですか? 電話がどうって。
GM:いや、むしろ、話をする気もない、って感じかな。
愁也:フゥー(落胆のため息)。
GM:では、お母さんがですね。
愛花:「いいですよ、サービスでしたら」
GM:と言って、ドンッとグラスとビール瓶を持ってきて。
愛花:「じゃあ、あなたもセルフサービスでやってください」
笑美子:グ、グロい……。黒いと言うより、グロいよ。
GM:まぁ、そうやって彼女は居間から出ていく。
怜花:その前に、そろそろやんだ頃に……。
GM:やみはしないけどね。
怜花:喧噪がやむでしょう。それくらいに居間に入って、「お兄ちゃん、電話が……」
愁也:俺は深くため息をついている。
怜花:こわごわ眺めますよ。
愁也:「あ、ゴメン」
怜花:「え、……と、電話が……」
愁也:「あ、ゴメン。誰から?」
怜花:「えと、えと……」
愁也:疲れてるわ、って感じです。
怜花:なんて言おう? うーん。こんな状況だと平常心はまだないだろうから、「えーと、お兄ちゃんが今日会った人」。
愁也:じゃあ、それはさすがに父さんの方に一瞬目が行った。
GM:父さんは何の話か分からない。
愁也:OK。「ああ、ああ。分かった分かった」といって、電話に……。
GM:電話切ったんでしょ?
愁也:電話番号聞いてるから。
笑美子:教えたよ。メモは渡した。
怜花:でも、家族崩壊の最中に彼女に電話する、と妹の目には映る。なんて兄だ。
GM:で、妹さんは今どこにいるんだ? 居間?
怜花:居間。ぼーっと立ってるって感じですかね。何をしていいか分からないから。
愁也:最後に父さんに、「父さんも疲れているの分かるしさ。俺も分かるしさ。でも、余りカッカしないでよ、頼むから」
GM:じゃあ親父は、一杯ビールをくいっと飲んで、そのまま部屋の方へ上がっていってしまう。
愁也:あー……。
GM:と言っても、お父さんとお母さん、部屋一緒なんだけどね。じゃあ、お母さんが台所に残っていて、親父の飲んだグラスを片付ける。
愁也:よかった、片付けるのか。
GM:どうすると思った? 割ると思った?
愁也:違います。ほっとくのかな、と思った。それなら俺が片付けようと。「……しかし、あいつから電話かぁ」
GM:で、どうするの? 電話かけに行くの?
愁也:どうしよう。あの状況で電話ってことは、ああなるしか考えられないよなぁ。
誠二:うん、それはある。
愁也:とりあえず電話をもらったから、電話だけはかけ返すか。
GM:電話かけに行く、と。
愁也:うん。
GM:では、君は居間から退場して、怜花とお母さんだけが居間に残る。
愁也:やめろぉ!(咆吼)
怜花:「お母さん……」
GM:彼女は、たった一個のグラスを洗うには、十二分すぎる時間をかけて……。
誠二:ずーっと洗ってるんだな。たまらん。
怜花:「お母さん……。もう、グラス洗えてると思うけど」
愛花:「そうね……」
GM:こんどは、そそぐのに時間をかける(笑)。
愛花:「ゴメンね、わたしもう、あの人についていけないかも……」
一同:(無言)
GM:そう言いながら、あなたの方を見る顔は、涙でぐしゃぐしゃです。そのままあなたに、もたれかかってきます。あなたの肩のところ頭を預けて、涙であなたの肩口が濡れます。
怜花:「お母さん……」(絶句)
愛花:「ゴメン、ゴメンね。もう、だめかもしれないの……」
怜花:ちょっと待って下さいよ。(しばし行動指針を考えて)じゃあ、一歩ずつ後ずさりながら、「イヤだよ。イヤだよ……。私は、もう一人になるのはイヤー!」といって、自分の部屋に駆け上がっていってしまいます。
GM:愛花さんはそこで泣き濡れていて、愁也には怜花のそんな声が聞こえた。で、愁也は電話に手をかけている。さて、ここは時間が間に合うか、タクシーと微妙なところだな。
笑美子:ちなみに、私のつもりとしては……。
誠二:幸運判定じゃないかなぁ? どっちの幸運だろう?
笑美子:愁也の幸運でしょ(即答)。
誠二:ひでぇなぁ(笑)。
愁也:冷たいなぁ(笑)。
(注:満腹亭のGMはシチュエーションをプレイヤーの望むものにするときに幸運判定を要求するため、ここでは笑美子は「愁也からの電話が間に合わなくてもよい」と考えていることになる)
GM:つもりとしては?
笑美子:つもりとしては、外で待ってますよ。
愁也:まあいいや。とりあえずいまの(怜花の)様子を見て、はぁーって息をついて、かけはする。でも、つながっても留守電、と。
笑美子:「ただいま電話に出ることが出来ません……」
GM:外で待っているんだったら、電話の音が聞こえるかどうかの判定ぐらいはさせてもいいだろう。その前に、タクシーが着く前にかかってくるかどうかの幸運判定だな。
愁也:俺が幸運振りますか?
誠二:笑美子の幸運じゃないの?
怜花:ふーん。妹が泣いてても、なにも気にとめないお兄ちゃん。
愁也:気にとめてるんだよ! 俺は思いっきり。
GM:で、どう?
愁也:(幸運判定)6ゾロだった。
笑美子:じゃ、聞き耳、と。
愁也:ここで君が1ゾロ振ったらおしまいだな。
笑美子(ダイスロール)9、と。
GM:だったらまぁ、聞こえるな。それと同時にタクシーが滑り込んできて、電話の音がしたような気がする、くらいかな。
笑美子:タクシー(即答)。
誠二:だろうなぁ……。
愁也:じゃあ仕方ない。留守電に、「俺だ。もう出ちゃった後なのか。また電話下さい」と入れる。ハァ(深いため息)。……親父。
GM:ん?
愁也:親父。
GM:親父のところへ行くんだね。親父はベッドの上で、ウイスキーを飲んでる。
愁也:ストレート?
GM:氷を取りに台所におりるのも気まずいので、ストレートだ。
誠二:ウイスキーを持って氷を取りに行こうとして、思いとどまる姿が見えたりするんだろうなぁ(笑)。
愁也:じゃあ、トントン。「父さん、入るよ」
満彦:「ああ」
愁也:では入る。はぁー。
一同:(無言)
愁也:「いまの怜花の声、聞こえた?」
GM:無言で頷く。
愁也:じゃあ、一息ついて。「今日、笑美子に会った」
満彦:(驚いたように)「笑美子に? どこで?」
愁也:「家まで訪ねてきた」
満彦:「訪ねて……。昼間のあれが、か?」
愁也:(無言で頷く)
満彦:「わざわざうちまで、何のために?」
愁也:「母さんが、交通事故で……」
満彦:「はぁっ!? 幸香がか? で、いま幸香はどこに」
愁也:じゃあ、病院の名前を言って。「状態がどうなるかは、分からないって」
満彦:「命も危ないのか?」
愁也:(無愛想に)「詳しくは聞いてないけど、多分」
満彦:「だったら……」
愁也:(吐き捨てるように)「母さんは父さんに会いたいって言ってたって」
GM:言うんだな、それを。
愁也:言いました。
満彦:「会いに行ってやりたいなぁ……」
愁也:(怒気をはらんで)「じゃあ、父さんが母さんに会いに行ったら、どうなるか分かってる?」
満彦:「だけど、死にそうなんだろ? 愛花だってそれくらい……、分かってくれるだろう」
愁也:「今日のあの様子で?」
満彦:(苦り切った表情で)「間が悪い」
一同:(無言)
満彦:「容態は一刻一秒も争うのか?」
愁也:「多分」
一同:(無言)
満彦:「お前は会ってきたのか?」
愁也:こくりと頷きます。「少しだけ話をしてきた。本当に少しだけだけど」
GM:責めるような目で、私を見ないで……。というのはマスターの声。
満彦:「父さんは……」
愁也:「父さんが忙しいのもさ、父さんの気持ちも分かるけどさ! もうちょっと、もうちょっと俺たちのことも考えてくれよ」
満彦:「この年になって、やっと自分が納得できる、満足できるような仕事が出来るようになったんだ。そのためには、人一倍時間を使わなくちゃいかん。それなのに、愛花は家の方を、自分を見てくれ。そればっかりだぞ」
愁也:「当たり前じゃないか!」
満彦:(怒気をはらんで)「じゃあ、仕事を辞めろって言うのか」
愁也:「そうじゃないって。父さんは仕事と、俺たちと、どっちが大切なんだよ」
満彦:「どっちかを取らなきゃいかんような話なのか?」
愁也:(迫るように)「どっちを優先したいの? 仕事によって得られる満足が求めたいのか、それとも家族といる幸せが求めたいのか。父さんはどっちを求めてるの? どっちを優先したいんだよ」
満彦:「どっちかじゃあ、生きていけないだろ。家族だ、って言って、働かなくて……」
愁也:(遮るように)「そうじゃないって!」
一同:(無言)
愁也:「別に両方は取れるだろ。いままでだってできたじゃんか。でもどちらかに天秤が大きく傾いたら、どちらかは……」
満彦:「年齢が上がって責任が重くなってくれば、それだけ長い間働かなきゃいけないんだよ。いまこの不況で、1日13時間14時間働けって言われて、働くヤツはいくらでもいるんだ。イヤだって言ってさっさと帰ってきたら、ああそうですかってクビ切られるんだよ。そこまで分かって言ってるか!? 口先だけのことを言うんじゃない!」
愁也:(気圧されている)「……じゃあ、じゃあそれで、それでみんな、またバラバラになっちゃってもいいって言うの、父さんは?」
満彦:「だから分かってくれって言ってるじゃないか。休みの日は家にいるだろ。仕事終わり次第真っ直ぐ帰ってきてる」
愁也:「それだっておぼつかなくなってきてるじゃないかよ、最近」
満彦:「忙しいんだよ。不況なんだよ!」
愁也:「不況不況って、その言葉に逃げようとしてないの、父さん?」
満彦:「じゃあ、いまの会社辞めようか?」
愁也:「そんなこと言ってるんじゃないよ」
満彦:「時間労働しようか? お前を大学に行かせられなくなるけどな」
愁也:「別に、俺が大学行かないでそれで父さんが必ず毎日、真っ直ぐ帰って来るんだったら、俺大学行かないよ。少なくとも、母さんと怜花の前でさ、日曜日は絶対家にいるって約束してさ、それを守ってくれよ。頼むから。帰りだってさ、必ず、週に何日かは七時までに帰って来るって、そう言って約束してくれよ。それだけ約束してちゃんとやってくれれば、母さんだって、怜花だって分かってくれるしさ。頼むよ父さん……」
満彦:(脅すように)「七時に帰ってこいって言葉の意味が分かっていっているんだな?」
愁也:(半ば涙声)「分かった。平日のことはいいから。日曜日はずっといるって、それだけでいいからさ」
GM:とりあえず、威圧しておくか。
怜花:(笑)
GM:(ダイスロール)13か。
愁也:これは、私は意志力か何かで抵抗になるんでしょうか? (ダイスロール)15、だね。
GM:やるじゃないか。
誠二:おー、すごい。
愁也:じゃあ、目は見つめ返す、ってことで。
GM:じゃあ、そういうことにしておこう。平行線だし。まあ、こちらの方はそんなところで。で、今日はもう、向こうからのアクションがなければ寝るんだね?
愁也:寝ます。
怜花:泣き疲れて寝ます。枕を濡らしながら寝まーす。
GM:まぁ、翌日日曜日だから。
怜花:服はよれよれでーす。
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