君はデンマークを見たか!? 2004
第1回:デンマーク0−0イタリア(2004年6月14日ギマラエス)
甲斐高風は2004年(第12回)ヨーロッパサッカー選手権ポルトガル大会において、デンマークを応援しています。
おかげさまで、日本でデンマークを応援している人は2年前のワールドカップをきっかけに増えたようですが、その要因はふたつに大別できます。
ひとつめは、彼等の気質です。例えばこんなエピソードがあったりします。
●あ〜KOREAこりゃ!●
●デンマークとトマソンのいい話●
そして今回も、あのチェルシー(イングランド)に所属するサイドアタッカー、FWイェスパー・グロンケアがモアテン・オルセン監督の「人生にはサッカーより大事なことがあるんだよ」という言葉を受け、母親の最期を看取る(6月10日永眠)ために戦線離脱するなんてエピソードがあったりします。
ふたつめは、彼等のプレイそのものです。
今回デンマークは6大会連続7回目の出場であり、これは連続出場としては9大会連続9回目の出場を果たしたドイツに次ぐ実績です。
そして今回参加国16ヶ国の中で、グループリーグの日本地上波放送があるのは9ヶ国、その中に(イタリアの恩恵で)デンマークは名を連ねています。
ちなみにグループCにはプレーオフ組(グループAにスペインとロシア、グループBにクロアチア、グループDにオランダとラトビア)がおらず、「死のDグループ」より実力が伯仲しているという説もあるのですが、
実力が伯仲していてもイタリア、デンマーク、スウェーデン、ブルガリアとカウンターサッカーだらけで見応えのある試合にならないと思われているようです。
と、いうことで初戦の相手は「カテナチオとファンタジスタという伝統を守る強豪」イタリア(FIFAランキング10位、ちなみにデンマークは15位)。
一応ヨーロッパサッカー選手権優勝国同士の激突だったりするが、気温は33度、相手はイタリア、しかもグロンケアに加え中盤の軸となるMFトーマス・グラベセンも予選時の累積警告で出場できないと、
デンマークが叩き潰されるのに充分な条件は整っていた。
しかし、日本地上波放送があったこの試合で披露されたものは単なるカウンターサッカーを卒業し、「個人」と「組織」が一体となったまとまりのいいチームとして「フィールド全体を支配する」新生ダニッシュ・ダイナマイトの勇姿であった。
特にイタリアが色々な意味でスロースターターである点と風上である点を活かして勝負を賭けた前半は素晴らしく、
GKへのバックパスまで含めた小気味いいパスワーク(1回タイミングが合わずにコーナーキックを与えていたのは御愛嬌だが)、
鋭いサイドアタック、縦横無尽のポジションチェンジ、相手を自由に動かさせないプレスといった攻守共に積極的なプレーを見せた。
GKトーマス・ソーレンセンの「ミラクルウォール」とイタリアGKジャンルイージ・ブッフォンの「黄金の右腕(というよりはむしろ「浴びせ蹴り」か)」もあり、
結果的にはスコアレスドローだったが、見応えのあるスコアレスドローだった。
しかし、勝負とは非情なものであり、いくら「過程」が美しくても所詮スコアレスドローはスコアレスドロー。
リスボンで行われたスウェーデン5−0ブルガリアという「結果」がデンマークとイタリアの決勝トーナメント進出の前に立ちはだかることになった。
グループC | ス | デ | イ | ブ | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
スウェーデン | − | | | ○ | 3 | 5 | 0 | +5 |
デンマーク | | − | △ | | 1 | 0 | 0 | ±0 |
イタリア | | △ | − | | 1 | 0 | 0 | ±0 |
ブルガリア | ● | | | − | 0 | 0 | 5 | −5 |
第2回:ブルガリア0−2デンマーク(2004年6月18日ブラガ)
2戦目の相手はブルガリア(FIFAランキング40位)。
山を切り出して建てたと思われるゴール裏に観客席がない大胆なスタジアムで行われたこの試合、
前半戦は前の試合同様フィールドを支配するデンマーク節炸裂の試合展開となるが、前の試合同様決定力だけが足りない。
しかし、前半終了直前44分に1人目の「帰って来た男」グラベセン→左のサイドアタッカー、FWマルティン・ヨンデルセン→シャドーストライカー、FWヨン・ダール・トマソンのホットラインで先制し、最高の形で前半戦を終える。
後半戦はブルガリアサッカーの真髄を窺わせる鋭いカウンターに防戦一方となるが、
後半38分に審判への抗議により2枚目のイエローカードをもらったキャプテン、スティリアン・ペトロフが退場になり10人になるとスウェーデン戦の時と同様にブルガリアの集中力が切れてしまう。
そこを衝いて後半ロスタイム47分、(前半23分からFWデニス・ロンメダールに代わって出場していた)2人目の「帰って来た男」グロンケアが(右のサイドアタッカーなのに)左サイドからトマソンとのワンツーで追加点を挙げ、
前後半共に終盤で確実に得点する「ダニッシュ・ダイナマイト」の地味な攻撃力が爆発する結果となった。
一方ポルトで行われた試合はデンマーク戦でMFクリスティアン・ポウルセンに唾を吐きかけて3試合出場停止処分を受けたフランチェスコ・トッティ王子率いないイタリアが得意のウノゼロに持ち込むかと思われたが、
試合終盤にスウェーデンのFWズラタン・イブラヒモビッチのアクロバティックなジャンピングヒールキックが値千金の同点弾となってイタリア1−1スウェーデンという結果になった。
この為、最終戦でイタリアが既にグループリーグ敗退が確定したブルガリア相手に勝利し、デンマークとスウェーデンが引き分けると3チームの勝ち点が並ぶことになるが、
その場合並んだチーム同士で行われた試合の戦績が優先される為、デンマークとスウェーデンが2−2以上で引き分ければスウェーデンとデンマークがグループリーグ突破、
1−1で引き分ければ3得点で2点差以上(3−1以上)でイタリアが勝利すればスウェーデンとイタリア、そうでなければスウェーデンとデンマークがグループリーグ突破、
0−0で引き分ければスウェーデンとイタリアがグループリーグ突破することになるようである。
いささかわかりにくいが、流石に2−2以上を演出するのは厄介である為、不利なデンマークが真剣勝負にいってスカンジナビアダービーで白黒はっきりさせる展開になるであろうと思われる
(個人的にはその上で、ブルガリアの健闘が北欧2国に御褒美をもたらしてくれる結果を期待したい)。
グループC | ス | デ | イ | ブ | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
スウェーデン | − | | △ | ○ | 4 | 6 | 1 | +5 |
デンマーク | | − | △ | ○ | 4 | 2 | 0 | +2 |
イタリア | △ | △ | − | | 2 | 1 | 1 | ±0 |
ブルガリア | ● | ● | | − | 0 | 0 | 7 | −7 |
第3回:デンマーク2−2スウェーデン(2004年6月22日ポルト)
3戦目の相手は北欧の友人にしてライバルであるスウェーデン(FIFAランキング18位)。
北欧の誇りを賭けたスカンジナビアダービーになるのかイタリアを叩き潰す2−2を演出するフレンドリーマッチになるのかという点に注目が集まったこの雨中の試合は、
ギマラエスで行われたイタリア−ブルガリアと同時進行で行われた。
まずは前半28分、トマソンの美しい軌道を描いた「ドライブシュート」がサイドネットに突き刺さり先制すると、
相手の反撃をソーレンセンの「ミラクルウォール」とポストで防ぎきり、最高の形で前半を終える。
――その頃イタリアは、前半45分、ブルガリアFWマルティン・ペトロフに与えたPKを本人が確実に決め、ブルガリアの初得点により負けていた――
ところが後半2分、スウェーデンFWヘンリク・ラーションとソーレンセンが接触したことによるPKを本人に確実に決められ、最低の形で後半が始まる。
――その頃イタリアは、後半3分、MFショーネ・ペッロッタが混戦を制して同点弾を放ち、最高の形で後半を始めていた――
しかし後半21分、こぼれ球を絶妙の位置で拾ったトマソンが追加点を奪うと、その後も、
既に「死のグループD1位」が決まり万全の体制で準々決勝に臨める(しかもデンマークが大の苦手としている)チェコと余程激突したくなかったのか、
ACミラン(イタリア)に所属するトマソンがイタリアを援護したかったのか、或いは得点王を狙っていたのか(現在3得点、1位の18歳の新星FWウェイン・ルーニーは4得点)、
前2試合(17:00開始)と異なり19:45開始の上に雨天がよかったのかは不明だが、
とにかく体力も精神力も落とさずに試合を優位に進める。
それでも今大会必要な時に必要な点を得ることに関しては際立っているスウェーデンは後半44分、FWマティアス・ヨンソンが同点弾を叩き込む。
結局これで2−2が成立してしまい、そのまま試合は終わる。
――その頃イタリアは、後半ロスタイム49分、FWアントニオ・カッサーノが決勝点を奪い、2−1で逆転勝利していたのだが、結局徒労に終わることとなった――
とはいえ、北欧対決の2−2が問題視されるのはイタリアが3−1以上で勝った場合であり、今回は結局総得失点差(=ブルガリア戦の戦績)通りの順位に落ち着いたといえる。
この結果、グループCはスウェーデンが1位、デンマークが2位で決勝トーナメント進出となり、
1992年に後一歩というところで叶わなかったスカンジナビアダービーによる決勝戦という夢の可能性を残すことになった。
グループC | ス | デ | イ | ブ | 勝点 | 得点 | 失点 | 得失点差 |
スウェーデン | − | △ | △ | ○ | 5 | 8 | 3 | +5 |
デンマーク | △ | − | △ | ○ | 5 | 4 | 2 | +2 |
イタリア | △ | △ | − | ○ | 5 | 3 | 2 | +1 |
ブルガリア | ● | ● | ● | − | 0 | 1 | 9 | −8 |
第4回:デンマーク0−3チェコ(2004年6月27日ポルト)
決勝トーナメント初戦の相手は今大会唯一のグループリーグ全勝を「死のグループD」で成し遂げたチェコ(FIFAランキング11位)。
デンマークはエースストライカー兼ポストプレイヤーのサンドが負傷欠場の為本来シャドーストライカーのトマソンがワントップで最前線に立たねばならなくなり、地味な攻撃力がますます地味になった結果、
前半戦に滅法強いデンマークが持ち味を発揮できないまま前半戦を終えると、後半戦に滅法強いチェコは後半開始早々から遠慮なく持ち味を発揮してきた。
まずは後半4分、MFカレル・ポボルスキーのコーナーキックから今大会最長身(202cm)のFWヤン・コラーがヘディングで1点目を叩き込むと、
後半18分にはポボルスキーのスルーパスからFWミラン・バロシュが4試合連続得点となるループシュートで2点目を、
そして休む間もなく後半20分、2003年バロンドール(欧州最優秀選手)、MFパベル・ネドベドのスルーパスから再びバロシュが現時点での得点王(5得点)となるシュートで3点目を挙げ、
一気に安全圏まで引き離す。そのまま試合はチェコの今大会初先制にして初完封という完勝に終わり、
貴重な日本地上派放送での準決勝を「ギリシャ対デンマーク」なんてカードにするわけにはいかないという期待に応える形でデンマークの今大会は終わった。
ちなみに今大会出場国16ヶ国中、グループリーグの日本地上波放送がなかったのはスペイン、ロシア、クロアチア、スウェーデン、ブルガリア、ドイツ、リベリアの7ヶ国でした。
その中で決勝トーナメントまで進出したのは堅守速攻を誇る北欧の雄・スウェーデンだけで、
ベスト8でオランダと激突し、スコアレスのまま延長戦まで戦った結果、PK戦で敗れました。
さて、ここまでデンマークや甲斐高風を温かく見守って下さった皆様、本当にありがとうございました。
次は2006年(第18回)ドイツサッカーワールドカップです。
デンマークが参加するヨーロッパ地区1次予選グループ2(2004年9月4日−2005年10月12日)は以下のようになっています。
トルコ ← 2002ワールドカップベスト3(&EURO2004プレーオフ敗退)
デンマーク ← 2002ワールドカップベスト16&EURO2004ベスト8
ギリシャ ← EURO2004優勝(2004年7月5日追記)
ウクライナ
グルジア
アルバニア
カザフスタン
地味に激戦区です。
と、いうことで、デンマークが地区予選を突破でき、甲斐高風がまだデンマークを応援しており、しかも当サイトが健在である可能性はあまり高くないと思われますが、その節にはまたよろしくお願いいたします。
参考資料(デンマークは第2・7−12回大会で本大会進出)
1960年(第1回)フランス大会:ソビエト連邦
1964年(第2回)スペイン大会:スペイン
1968年(第3回)イタリア大会:イタリア
1972年(第4回)ベルギー大会:西ドイツ
1976年(第5回)ユーゴスラビア:チェコスロバキア
1980年(第6回)イタリア大会(2回目):西ドイツ(2回目)
1984年(第7回)フランス大会(2回目):フランス
1988年(第8回)西ドイツ大会:オランダ
1992年(第9回)スウェーデン大会:デンマーク
1996年(第10回)イングランド大会:ドイツ(3回目?)
2000年(第11回)オランダ・ベルギー大会:フランス(2回目)
2004年(第12回)ポルトガル大会:ギリシャ(2004年7月5日追記)
2008年(第13回)スイス・オーストリア大会:?
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