2019年




『十二人の死にたい子どもたち』(冲方丁/文藝春秋 2016.10 → 文春文庫 2018.10)
本・振興賞『学研の図鑑 キン肉マン 超人』(ゆでたまご監修/学研プラス 2019.06)
ノミネート全111作

『十二人の死にたい子どもたち』
・ 廃病院で安楽死をするために集まった12人の少年少女の物語。のはずがそこに集まったのは13人だった、という物語。

・ 第156回直木三十五賞候補作、受賞作は『蜜蜂と遠雷』(恩田陸/幻冬舎)。

・ 文庫版になってから読もうとしていたら映画になってしまった。映画公開前に文庫版が出たので慌てて読んだ。ちなみに映画も観た。

・ 文庫版の吉田伸子(書評家)の解説によれば『十二人の怒れる男』『12人の優しい日本人』に続く「十二人もの」。 もちろん甲斐高風もタイトルからも赤の他人同士による会話劇と全員一致まで繰り返される投票によるミステリという点からも両作品を思い出しながら読んでいたが、 第三者を裁くのではなく、お互いが裁き裁かれる当事者になるという点から16人の「ダンガンロンパ」シリーズや15人の『15×24』(新城カズマ/集英社スーパーダッシュ文庫)も思い出しながら読んでいた。 全部まとめて甲斐高風の中では「陪審員もの」になっている(←陪審員が当事者という矛盾)。

・ 読んでいる間はあまり思わなかったのだが、閉鎖空間に1人多いという点は『11人いる!』(萩尾望都)も入っているのかなこれ。

・ 他の人の感想見ると読む前はデスゲームものだと思っていた人がいたりするようだ。「ダンガンロンパ」を思い出している時点で甲斐高風も人のこと言えないのでは。

・ 「死にたいから殺さないで」という映画版の惹句はこの作品のよさを伝えていない気がする。

・ こういうことは書いておかないと忘れてしまうので書いておくと、読んでいる時は10番・セイゴの声が細谷佳正で脳内再生されていた。


・ ちなみに、2019年は児童書なのに電子書籍化されていることを活かしてズッコケ三人組強化年間だったので、2019年の作家は再読含めてズッコケ三人組全50作+『ばけばけ』で51作の那須正幹

・ 個人的ベストは40周年を記念して公式サイトで行われた「あつまれ!「ズッコケ三人組」同窓会開催記念 50巻総選挙」でも堂々の1位だった『うわさのズッコケ株式会社』。 文字通りズッコケ三人組が株式会社を経営するお話。 小学6年生が株式会社を経営するというリアルと虚構のバランスが抜群にいい。 物語が面白いだけではなく令和の時代においてもなおこれを子供のうちに読んでおくだけで後に経営者になるにしても労働者になるにしても消費者になるにしても投資家になるにしても有用だと思える。 消費者にはならないのはかなり困難なのでつまり必読。 そしてラーメンが食べたくなって困る困らない。

・ ところでズッコケ中年三人組シリーズでハカセがクラス一のかわい子ちゃん・荒井陽子(I Love ヨーコ!!)と結婚する、のはまぁいいとしてその荒井陽子が当時からハカセのこと好きだったみたいなこと言いだした時は何言ってるんだこいつとか思ったけど、読み返すと確かに割とハカセとは親しく会話していた(ハチベエやモーちゃんとはあまりまともな会話をしてないだけともいう)。 修学旅行ではラッキースケベまであったし。

・ 余談だけど『ばけばけ』の主人公が老人三人組だからタイトルが「ぼけぼけ」だと思い込んでいたのは内緒だ。


・ ちなみに、2019年の漫画家は2017年に続いて『修羅の刻』(講談社、廉価版)含めて13作の川原正敏


参考資料甲斐高風のBOOK LIST(冲方丁)
参考資料甲斐高風のBOOK LIST(那須正幹)
参考資料漫画家作品年表(川原正敏)

『学研の図鑑 キン肉マン 超人』
 「学研の図鑑」&「キン肉マン」とか夢の超人タッグすぎる。


学研プラス公式ブログ
  果てしなき夢は終わらない。 「超人図鑑」誕生秘話(後編)
  果てしなき夢は終わらない。「超人図鑑」誕生秘話(前編)
  ゆでたまご先生描き下し初回限定ケースを発表! スグル、テリー、ロビンの黄金のトリオが降臨!
  キン肉マン40周年×学研の図鑑50周年が究極のタッグ! 超人約700体を生き物として分類・網羅した、誰も見たことのない超人図鑑が誕生!


参考資料漫画家作品年表(ゆでたまご)


TVドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ 2019.10.-2019.12.)
ノミネート全55作
・ 令和史上最高のホームドラマ。

・ ニートの岸辺満(生田斗真)、 その母で夫の死後喫茶店を切り盛りする岸辺房枝(原田美枝子)、 満の姉でキャリアウーマンでマイホーム建て替えの間の3か月間だけ家族3人で岸辺家に同居しに来る秋葉綾子(小池栄子)、 綾子の現在の夫の秋葉光司(安田顕)、 綾子と前夫との娘で私立中学3年生で不登校の秋葉春海(清原果耶)、 の5人の家族の物語。

・ 話のタイトルは全て「其の一 すき焼きと自転車」「其の二 寿司とダンボール」のような感じで必ずごはんが入っている。5人のごはんとおしゃべりを見ていると家族団欒という言葉を思い出す。そしていつまでも見ていたくなる。

・ 最初「5人の食事と会話」と書いたけどしっくりこなかった。うん、「5人のごはんとおしゃべり」だ。

・ 30分*2話構成は最初わざわざアピールするほどのことかなと思っていたけど、事件を多くしない事件を大きくしない丁度いい構成だった。

・ ED「友よ」(関ジャニ∞)。

・ 脚本の金子茂樹は『プロポーズ大作戦』『もみ消して冬 〜わが家の問題なかったことに〜』の人。今回で完全に覚えた。


TVアニメ『鬼滅の刃』(TOKYO MX 2019.04.-2019.09.)
TVアニメ・特別賞『私に天使が舞い降りた!』(TOKYO MX 2019.01.-2019.03.)
ノミネート全164作
 


邦画『ちはやふる -下の句-』(2016年)
役者浅川梨奈(『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』2019年)
ノミネート全18作
 

『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』
 2019年の役者には実写映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』で藤原千花を演じた浅川梨奈(あさかわなな)を。
 まさか藤原千花の髪の色と顔(流石に目の大きさは違いますが)と胸と声を演じきれるなんて。
 地声は全然違うので朝一からめちゃ高い猫なで声を喋るのに苦労していたと話していたりむせてNGになっているシーンを見たりしたので本当に凄いなぁと。
 作品としては彼女以外の役者もよくやっていましたが、個人的には佐藤二朗が佐藤二朗としてベストを尽くしていたのがダメでした。
 なので赤坂アカの原作漫画は別にしても、実写映画よりは超大物新人アニソン歌手・鈴木雅之が歌うオープニング「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」やhalcaが歌うエンディング「センチメンタルクライシス」、ナレーション、四宮かぐや様役の声優・古賀葵(実写映画にも出演してましたね)&藤原千花役の声優・小原好美諸々ひっくるめてTVアニメ+WEBラジオの方が好きなのですが(TVアニメ2期楽しみにしています)、彼女の凄さに一票。
 余談ですが、今回確認するまでTVドラマから観ていたのに同じ2019年の漫画原作映画である『リケ恋〜理系が恋に落ちたので証明してみた。〜』の主人公・氷室菖蒲を演じたのも浅川梨奈であったことに全く気づいていませんでした。


洋画『アクアマン(AQUAMAN)』(2018年:アメリカ)
ノミネート全21作
・ DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)第6弾。

・ 海底のアトランティス帝国女王と地上人の灯台守の間に誕生した息子、アーサー・カリー=アクアマンの物語。

・ ジェイソン・モモア無双。

・ DCEUとして一応チェックしておこうくらいの気持ちで観たのだけど、ジェイソン・モモア演じるアクアマンというキャラクターのインパクト、あちこちへ移動する旅や海中の美麗な映像のインパクト、その各地こで繰り広げられるバトルの派手さのインパクト、と最初から最後まで実にいい映画だなー、実にいいエンターテイメント映画だなー、実にいい映画館で観る映画だなーと思いながらのめりこめました。

・ そして2022年公開予定の続編『AQUAMAN AND THE LOST KINGDOM』へ。


アニメーション映画『若おかみは小学生!』(2018年)
ノミネート全16作
・ 令丈ヒロ子の児童文学シリーズ原作。TVアニメ版(2018.04.-2018.09. テレビ東京、15分アニメ)視聴済。

・ 交通事故で両親を失った小学6年生のおっここと関織子(声:小林星蘭)が花の湯温泉街で春の屋旅館の女将をしているお祖母ちゃん・関峰子の元で若女将になるおはなし。あとユーレイとか鬼とか出てくる。

・ 序盤、祖母と打ち解けるのがTVアニメ版より早いなぁと思いながら見ていたけど確かにそこに描写を割いている時間はなかった。

・ 高坂希太郎監督。映像美についてはあちこちで言われ過ぎてて今更言うこともないですが、一番言われていたのは卵焼きを切る時の包丁の映り込みでした。甲斐高風は初見では全く気づいてませんでしたが。
 
・ 吉田玲子脚本。甲斐高風的には『たまこラブストーリー』の脚本家ですかね。
 
・ おっこのクラスメイトにしてライバルにして親友の秋好旅館のピンふり(ピンクのふりふり)こと秋野真月のピンふり+ツインテール+声:水樹奈々本当に好き。
 
・ ここから終盤のネタバレになります。

・ 観る前に映画自体の評判のよさとTVアニメ版どころか原作でも最後までちゃんとは触れてないらしい両親の交通事故について映画では触れているということは聞いていた。 今まで両親の交通事故について触れてこなかったのは当然で、だってそれは小学生が若おかみになるという舞台のお膳立てでしかなかったはずなのだから。

・ 交通事故の描写をがっつり描いた後で自動車に乗った時にそれがフラッシュバックするだけでもえぐいと思ったけど(その前に歩きながら自動車を避けるシーンがあって怖くないのかな?と思ったけど全然気にしてなさそうなのを見た後なので余計そう思った)、 そこから更に加害者一家が知らずに泊まりに来るなんて展開になるとはとは聞いてないぞ。

・ 小学6年生に一日でこれを乗り越えさせ、被害者と加害者、若おかみと客とお・も・て・な・しを描ききるとかそりゃ評判いいはずだわ。もはや手助けしてくれていたユーレイ達の成仏がおまけになってしまうレベル。
 
・ ちなみにこの映画、文部科学省選定作品(少年向き、家庭向き)になってるのだけど文部科学省は世の中の小学6年生にこのレベルを求めてるのだろうか。
 
・ 本日の余談。以前も書きましたが、甲斐高風の第76回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞作『ジョーカー』を観た感想は「煙草を吸う道化師って絵になるなあ」以上でも以下でもないです。


「命題はほぼ同じ」「若おかみの方がつらい」と何故かめちゃくちゃ比較される『ジョーカー』VS『若おかみは小学生!』 - Togetter


参考資料★2015年★  アニメーション映画『たまこラブストーリー』(2014年)


ゲーム『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント/プレイステーション4(PlayStation VR) 2018.10.04.)
ノミネート全10作
 CERO:A(全年齢対象)。
 VR界のスーパーマリオブラザース。
 無料VRパーティゲームの『THE PLAYROOM VR』の『ROBOT RESCUE』で遊んだ時死ぬほど酔ったので避けていたのだが、評判を聞いて体験版を試してまだ少し酔うけど遊べることを確認してからの購入。
 最終的には全然酔わなくなった。

 仲間のボット達救出のためにバラエティに富んだステージを360度全方向所狭しと動き回るアストロ。
 それを眺めつつフォローしていく自分。
 という形式のアクションゲーム。

 初見殺しが多い死にゲーなのだが細かいチェックポイントと無限コンテニューでストレスはたまりにくい(たまらないとは言っていない)。
 難易度も本編はその日どうしてもクリアできなくて不貞寝して日を改めてやるとクリアできるレベル。
 隠れているカメレオンを見つけると遊べるようになるチャレンジは自分の実力だとちょっと力及ばなかった。
 ちなみに一番やりなおしたのはラスボス戦だが、これはラスボス戦が一番難しかったというよりも手裏剣を撃つ動作はボタンを押すのではなく押し出す動作が必要なことを忘れていて手裏剣がうまく連射できなくてやられ続けていたからというのはここだけの話ということで。
 ボット救出やカメレオン発見のために自然に目と耳を凝らして(ボットは「ヘルプミー」と言っていたりする)あちこち見回すようになるのは実にいいアイデア。
 余談だけど、1周目で見つけられなかったボットやカメレオンについてはネットで情報を集めたりしたが、他はともかく1−2の5体目(上空の飛行機にボールをぶつけて救出)は全26面の2面目で出してくるレベルのネタではないと思った。

 最後に好きな感想を2つ紹介しておく。


PSVR日記
  今日のプレイ日記 1/14
  「ASTRO BOT:RESCUE MISSION」感想
「 一言でいうと、ゲームがリアリティーを追求した結果失ってしまったものが、「アストロボット」にはあるのよ。それはデフォルメされた世界ならではの誇張表現であり、ユーモアであり、遊び心だと思う。 」


もとにしゲーム天国   カタール
「 ぼくの知ってるソニーはこういうソフトを出せない
ということはこれはソニーのソフトじゃないんだと思う 」


キャラクターロイド・フォージャー、ヨル・フォージャー、アーニャ・フォージャー(『SPY×FAMILY』遠藤達哉/集英社)
・ ちちははあーにゃ。

・ 登場人物その1、ちち。ロイド・フォージャー。精神科医。実は西国(ウェスタリス)情報部の千の顔を使い分けるスパイ。暗号名〈黄昏〉。職業はもちろん名前も当然偽名。表向きは「ちょっと料理ができて顔が良くて背が高くて気遣いができるだけの医者」。完璧じゃないか。

・ 登場人物その2、はは。ヨル・ブライア。東国(オスタニア)首都バーリント市役所員。実は殺し屋。暗号名〈いばら姫〉。どこぞのネットで見かけた言葉を借りると「黒髪ロングぽんこつゴリラ肩まるだし刃物フェチ殺し屋(27)」。完璧じゃないか。

・ 登場人物その3、あーにゃ。アーニャ。実は組織から逃亡した人の心が読める超能力者。被験体“007”。多分本当は4歳か5歳だけど逆サバ読んで6歳として名門イーデン校へ。

・ 以上3名による偽家族もの。スパイが名門校の懇親会で標的に接近するために妻子が必要になったのでお互いに正体を隠したまま家族を演じていくという物語(なおアーニャは人の心が読めるので全て知っている)。

・ 他人が家族になっていく偽家族ものの王道を見せられている感じ。実にエレガント。

・ いいか、ちちとははが上からの命令で殺しあう(スパイ狩りをしているのがははの組織っぽい)とかあーにゃが脱走した組織から追手が来るとかそういう展開の覚悟はできている。できているが、その前に、3人で川の字になって寝るとか、女性と行動を共にしてるちちを見かけたははがもやもやしながら尾行したらははへのプレゼント探していたオチとか、やらかしたあーにゃにちゃんとははがめって叱ってあーにゃがごめんなさいするとか、そういうの全部やってからにするんだぞ!全部やった後だと落差が凄すぎて耐えられないけど! 「少年ジャンプ+」の作品紹介の「スパイ×アクション×特殊家族コメディ!」をはじめとしてやたら「コメディ」を強調しているのを信じているからな!は!?作者の過去作品がなんだって!?

・ 余談だけど、はげちゃびんって禿げ+茶瓶(=薬缶)から来てたのか(まめちしき)。

・ ちなみに甲斐高風は偽家族ものでは『箱舟は冬の国へ』(西澤保彦/光文社)が好きです。あれも父母娘でしたね。


・ 尚、一応2019年のキャラクター・次点を挙げておくと、立石真直&三ツ谷結衣(『この会社に好きな人がいます』榎本あかまる/講談社)になります。

・ 社内恋愛観測バラエティー。

・ ツダ製菓入社6年目、経理部の立石真直(28)&同じく入社6年目、企画部の三ツ谷結衣。同期で犬猿の仲だったはずが内緒で秘密の交際を開始し、登場人物紹介にお互い相手のことが「好きすぎる」と書かれてしまうバカップルに。

・ 「こっそり付き合ってる社内恋愛“プレイ”」は愛人プレイみたいだなーと思った。こっそり付き合っているため基本が休日の家デートになった結果イチャイチャばかりしているし、最悪ばれても微笑ましい愛人プレイって考えると社内恋愛最高だな!(なにか間違っている感想)


参考資料漫画家作品年表(遠藤達哉)
参考資料漫画家作品年表(榎本あかまる)


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