2013年




『新月譚』(貫井徳郎/文藝春秋 2012.04)
ノミネート全81作
 8年前に筆を折った美人閨秀作家・咲良怜花(57)。 彼女の半世紀の半生記。

 第147回直木三十五賞候補作(受賞作は『鍵のない夢を見る』(辻村深月/文藝春秋))。
 この本は母親が先に読んでいて「面白くなかった。少なくともお前向きではない」と言われていたけど(ちなみに母親の貫井徳郎作品のオススメはデビュー作『慟哭』)、長いのにするすると読めて面白かったですよ。
 新刊紹介文に「甘美で残酷な究極のラブミステリー」と書いてあって、ラブはともかくどこがミステリーなんだと思っていたら、作風の転換と絶筆の「理由」がミステリーだったのね。


 ちなみに、2013年の作家は2006年、2007年、2010年、2012年に続き、7作の西尾維新


 そして、2013年の漫画家は『ミスター味っ子II』(講談社、廉価版)で7作の寺沢大介


参考資料甲斐高風のBOOK LIST(貫井徳郎)
参考資料甲斐高風のBOOK LIST(西尾維新)


TVドラマ『空飛ぶ広報室』(TBS 2013.04.-2013.06.)
役者真野恵里菜(『みんな!エスパーだよ!』テレビ東京 2013.04.-2013.07.)
ノミネート全50作
 

 2013年の役者には『みんな!エスパーだよ!』浅見紗英役の真野恵里菜を。
 『みんな!エスパーだよ!』は若杉公徳原作のある日突然精神感応(テレパシー)能力を身に着けてしまった鴨川嘉郎達の物語。
 監督・脚本が園子温、主演&ヒロイン2人を演じるのが染谷将太&夏帆&真野恵里菜(鴨川嘉郎役&鴨川嘉郎の幼馴染にしてある日突然精神感応(テレパシー)能力を身に着けてしまった平野美由紀役&鴨川嘉郎の憧れの転校生である浅見紗英役)、 オープニングテーマが「(Where's) THE SILENT MAJORITY?」(高橋優)&エンディングテーマが「夜間飛行」(石崎ひゅーい)という五十歩百歩間違えれば月9でもおかしくないメンバーなのにやってることはエロコメ。
 なんでやねん。
 そして女性陣でその方向で一番頑張っているのが園子温の妻である神楽坂恵(予知能力を持つ秋山多香子役)。
 なんでやねん。
 それはともかく、初めて見た時世の中にこんな美少女がいるのかと驚いた真野恵里菜が、このドラマでパンチラしたりオナニー連呼したりするのを見て驚いたので、彼女を2013年の役者に。
 なんでやねん。


TVアニメ『翠星のガルガンティア』(TOKYO MX 2013.04.-2013.06.)
ノミネート全107作

 


邦画『映画 鈴木先生』(2013年)
邦画・特別賞『めぐりあうとき』(2013年:舞台)
ノミネート全16作

『映画 鈴木先生』
 

『めぐりあうとき』
・ 2011年初演作品の再演。脚本・演出=園田英樹、出演=早田剛(高崎常道)、仲谷明香(里中きみえ)、みやなおこ(里中笑子)、神山武士(中野浩二)、白石稔(愛川ゴース)、田中優樹(城島健司)、滝沢乃南(紀野川咲)、万田祐介(藤田太郎)、天羽尚吾(今井つよし)、松田好太郎(はかた)、大野由加里(なごや)、鈴木富夫(電気工事の男)。 2013年9月18日−2013年9月22日笹塚ファクトリーで全8公演を2013年9月18日に観劇。

・ 漫画原作者の男・高崎常道と交通事故で足が不自由になった女・里中きみえ。2人の“引きこもり”が住んでいる同じアパートの上の階と下の階を舞台にした「息もつかせぬジェットコースター・コメディ」「ロマンチックコメディ」

・ 園田英樹、元AKB48・仲谷明香、2年ぶりに仕事を再開した奇跡のIカップグラビアアイドル・滝沢乃南、白石稔、自分が観た回には出演していなかったけど阿部敦(中野浩二役)、というスタッフ・キャストが個人的に美味しすぎる。

・ 男女問わず割とサービスシーンが多い。ちなみに一番は白石稔。

・ 高崎常道の妄想癖や上の階と下の階を同時に表現する手法によりジェットコースターを加速させながら、それでいてわかりにくいということもなく、最初から最後まで楽しめたいい舞台でした。蛾さえ飛び回っていなければ。


カラフル企画   Vol.4 めぐりあうとき


洋画『スーパーマン リターンズ(Superman Returns)』(2006年:アメリカ)
ノミネート全2作
 


アニメーション映画『風立ちぬ』(2013年)
ノミネート全15作
・ スタジオジブリによる宮崎駿原作・脚本・監督作品。主題歌は「ひこうき雲」(荒井由実)。

・ 零式艦上戦闘機(所謂「ゼロ戦」)の設計主任である堀越二郎をモデルに堀辰雄『風立ちぬ』『菜穂子』を加えてごちゃまぜにした堀越二郎の物語。 宮崎駿作品史上一番のラブストーリー。飛行機愛溢れる物語という意味と、堀越二郎&里見菜穂子の恋愛物語という意味で。後者については少なくともキスシーンの多さは宮崎駿作品史上一番。

・ 「堀越二郎&里見菜穂子の恋愛物語」を見ながら『まだ恋ははじまらない… "Love has not begun"』(蘇部健一/PHP研究所)を宮崎駿が映画化したら面白いんだろうなあとか考えたのは、多分自分だけだろう。

・ ただの「軽井沢のホテルで大量の葉っぱを食べてたドイツ人」だと思っていたカストルプにあんなに出番があるなんて。

・ この作品で唯一良くなかったと思ったのは、声。堀越二郎役の庵野秀明のことではない。飛行機のプロペラ音の「ぶるるるるー」といった効果音を人の声でやっていること。 おどろおどろしいシーンとかでは効果的だったと思われる場面もあったけど、どちらかというと笑ってしまった場面の方が多かった。笑わせたかったわけではないと思うのだけど。

・ この作品の感想において「矛盾」について触れている人がとても多いのだけど、個人的には里見菜穂子について語った「一番綺麗な姿だけを見せたかったのね」という台詞が全てなのではないかと思う。

・ 飛行機愛溢れる作品と書いたけど、印象に残ったのは蒸気機関車と鯖と煙草だったり。

・ ちなみに本作品は当初はスタジオジブリによる高畑勲監督・脚本作品である『かぐや姫の物語』と同日公開予定でした。


「風立ちぬ、いざ生きめやも(Le vent se léve! ... il faut tenter de vivre!)」 (ポール・ヴァレリー(Ambroise Paul Toussaint Jules Valéry)の詩「海辺の墓地(Le cimetiére marin)」より、堀辰雄訳)


参考資料★2012年★  本・特別賞『まだ恋ははじまらない… "Love has not begun"』(蘇部健一/PHP研究所 2012.09)


ゲーム『がんばれ!頭脳ちゃん』(CEROレーティングA:全年齢対象、ソニー・コンピュータエンタテインメント/PlayStation Vita(オンライン配信) 2013.02.28.)
ノミネート全15作
・ アタマチャレンジ。頭脳開放パズルゲーム。要はPS Vita版脳トレ。と、言われないためのタイトルやプロモーションビデオ↓だったのだろうけど、実はこれ洋ゲーのローカライズなので原題の『Smart As』なオシャレ感を推した方がよかったような。


プレイステーション オフィシャルサイト   がんばれ!頭脳ちゃん


・ 1日1回挑戦できる「デイリートレーニング」、「フリープレイ」、「頭脳ちゃんオンライン」で毎週更新される各都道府県別「ストリートチャレンジ」&フレンドや近所の人の記録に挑戦したり挑戦されたりする「“near”チャレンジ」が遊べるミニゲーム集。

・ ミニゲーム集として普通に面白い。「フリープレイ」で最初から全種類のゲームを遊ぶことができなかったりARカードが必要なゲームがあったりという問題点もあるけど。 ちなみにミニゲームは↓の4ジャンル*5種類=全20種類(各ゲームの内容は↓↓参照)なんだけど、前述したように実はこれ洋ゲーのローカライズなので自分の英語力だと「英語スキル」は本来想定されているより難易度が高くなってる。英語の正解に和訳つけてくれていたら英語の勉強にも使えたと思うんだけど。

(黄) 観察    : 「ボックスイン」「カップゲーム」「変化探し」「ターボタップ」「フラッシュ記憶」
(緑) 英語スキル : 「ワードホイール」「スペリング」「アルファトラップ」「脱字テスト」「仲間はずれ探し」
(青) ロジック  : 「キューブマニア」「パスファインダー」「ライブジグソー」「ブロックローラー」「カラーコネクション」
(赤) 計算    : 「ビッグナンバー」「数字バブル」「計算プラス」「ナンバーピンチ」「シーケンス計算」


ファミ通.com   カチコチ頭脳が、驚きのプルプル頭脳に……なるのか!? 『がんばれ!頭脳ちゃん』プレイインプレッション


・ ミニゲーム集として普通に面白い上に、タッチスクリーンはもちろん、背面タッチパッド、スピーカー、前面&背面カメラ(ARカードによる拡張現実含む)、モーションセンサー、nearとPS Vitaの機能を一通り体験できるのもポイント。マイクが体験できないこと以外はPS Vitaにプリインストールされている『ウェルカムパーク』よりもこっちをオススメ。 文字や数字の認識もなかなか高精度で、大文字小文字筆記体をどれもちゃんと認識してくれるし、微妙なものは正解に有利に判定してくれているような気もする。 計算の「×(乗算記号)」だけなかなか認識してくれないなぁと思ったら「*」を入力すればよかったらしい。


キャラクターヒタチ・イズル、アサギ・トシカズ、クギミヤ・ケイ、イリエ・タマキ、スルガ・アタル(『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』 TOKYO MX 2013.04.-2013.09.)
 明るくて熱い王道ロボットアニメ『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』のザンネン5、もとい、チームラビッツ。
 彼等も彼等の搭乗するロボット(アッシュ)も個性がバラバラで当初はチームとしてもバラバラなんだけど、これがいいチームになっていくんだ。
 いいチーム過ぎて、途中でチームラビッツに加わるクロキ・アンジュがなかなか馴染めなかったくらい。
 まぁ、先輩であるチームドーベルマンや戦闘母艦ゴディニオンのクルーや司令部やチームラビッツのピットクルーともみんないいチームになっていくんだけど、ここでもクロキ・アンジュはパイロット&ピットクルーを独りで兼ねちゃっていたためなかなか馴染めなかったり、そもそもクロキ・アンジュは性別が不明だったりと、わざとそういう描写になっているんだろうけど。
 ちなみに声は相葉裕樹、 浅沼晋太郎、日笠陽子、井口裕香、池田純矢(、渡辺明乃)。
 相葉裕樹は2009年度スーパー戦隊シリーズ『侍戦隊シンケンジャー』の池波流ノ介/シンケンブルー役で、池田純矢は2011年度スーパー戦隊シリーズ『海賊戦隊ゴーカイジャー』の伊狩鎧/ゴーカイシルバー役を演じていたりする。

 尚、一応2013年のキャラクター・次点を挙げておくと、冬海愛衣(『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』 TOKYO MX 2013.01.-2013.03.)になります。
 我々は安易に作品が化けた化けたと言う。
 例えば、えのきづの4コマ漫画原作+ESP研究会が舞台=はいはい定番の部活アニメ定番の部活アニメと思われていた同じクールのTVアニメの『琴浦さん』(TOKYO MX 2013.01.-2013.04.)に対して「化けた」という言葉は使われた。
 しかし、そりゃ読心能力が常時発動している琴浦春香さんの人生はそれまで鬱展開だったのが転校先でエロスの貴公子・真鍋義久の妄想に出会ったことでセピア色の世界がぶっ壊れてカラーになってオープニング「そんなこと裏のまた裏話でしょ?」(中島愛)がはじまる流れで「化けた」のだろうけど、 『琴浦さん』という作品そのものが「化けた」のではない。
 ただ我々がこの作品に対してノーマークだっただけだ。
 「化けた」というのは『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』のことを言うのだ。
 裕時悠示のライトノベル原作である甘修羅ラブコメディ+主人公である男性1人とヒロインである女性4人が所属する自演乙の会(自らを演出する乙女の会)が舞台=はいはい定番の部活アニメ定番の部活アニメと思われていたこの作品は、実際にその通りの展開になる。
 しかし、高校1年生であり、風紀委員として自演乙の会に敵対する存在であり、結局自演乙の会に入部することになる4人のヒロインの一人にして最後の一人であり、実は主人公の「婚約者」であり、妄想力抜群であり、「愛衣ちゃん大勝利!」「愛衣ちゃん大勝訴!」「おそとはしってくるー!」である冬海愛衣が投入されてから、この作品は「化けた」。
 明らかに面白くなったのだ。
 4人のヒロインの一人ではあるものの、どう考えても最後に勝利するヒロインは彼女ではないと思うのだが、そんなキャラクターを投入することで作品の面白さがここまで変わるのかと驚かされた。
 言い過ぎだと思うだろう?
 実は自分もそう思う。
 だからTVアニメ部門ではなくてキャラクター部門での選出であり、それも次点止まりなのだ。


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