2006年




『戻り川心中』(連城三紀彦/光文社 2006.01(cf.1980.09 講談社))
 収録作品「藤の香」「桔梗の宿」「桐の柩」「白蓮の寺」「戻り川心中」
本・特別賞『化物語 上下』(西尾維新/講談社 2006.11 2006.12)
 収録作品「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー」「なでこスネイク」「つばさキャット」
ノミネート全107作
 『戻り川心中』は連作短編集(<花葬>シリーズ)。
 収録されている「戻り川心中」は第34回日本推理作家協会賞短編賞受賞作&第83回直木三十五賞候補作。
 2箇所で読んだ感想(注)に触発されて読みました。
 感想としては「Something Orange」に書かれた 「読め! いいから読め!」 「この凄まじい物語たちをまだ知らないあなたを、ぼくは真剣にうらやましいと思っているのだ。」 という言葉を改めて紹介するだけで事足りると思います。
 花によって恋愛とミステリを融け合わせた文学の、傑作です。
 どの作品も読み終わる度にぞぞぞっと身震いする感覚に襲われました。
 個人的オススメは「桔梗の宿」。
 切ない。
 余談ですが、「Something Orange」の感想では東野圭吾作品の『容疑者Xの献身』(文藝春秋)が引き合いに出されていますが、 表題作「戻り川心中」に関してはむしろ『悪意』(講談社)の方を思い出しました。
 ハルキ文庫版『戻り川心中』や講談社『夕萩心中』には<花葬>シリーズの残り3編「菊の塵」「花緋文字」「夕萩心中」が収録されているようですが、 私同様この小説を初めて読んだ人なら皆様必死になって探し回っているでしょうから入手は難しそうですね。
 特別賞は2006年の作家(6作)にして『刀語』の12ヶ月連続刊行(&読破)が実現したら2007年の作家もほぼ決まりのような気がしたりしなかったりする西尾維新から。
 『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』(講談社)と『DEATH NOTE ANOTHER NOTE ロサンゼルスBB連続殺人事件』(集英社)のノベライズも傑作でしたが、 『化物語』はそれにも増して素晴らしく面白い小説でした。
 さて、素晴らしく面白かった小説の感想を書こうとする場合、 未読者に対してはネタバレをできる限り排除しながらもその小説への興味を抱かせるようにしつつ、 既読者に対しても既読者同士にしか通じない内容に触れる、というのが基本路線であると思うのですが、通常の場合これは難題です。
 しかし、この小説の場合はそれに関しても素晴らしく面白いことになっていて、なんとわずか2文字でそれが実現できてしまうのです。
 では書きます。

 「蕩れ」

 以上、感想終了です。
 これで未読者が「蕩れ」ってなんだろう?と興味を抱くことは確実ですし、既読者と心が通じ合うのも確実です。
 少なくともタイマン張ったらマブダチくらいには確実です。

 と、いうわけで感想は終了してしまったので以下は駄文で余談です。
 この小説、『化物語』というタイトルでありながら、実は「化物」の「物語」ではありません。
 いや、「ありません」と言い切ると流石に嘘になりますけど、タイトルの意味するところは「化物」の「物語」ではなく、実は日常という名の「物語」が「化ける」から『化物語』なのだと思っています。
 では、この小説の主人公である高校3年生の男の子・阿良々木暦の物語はどこで化けたのかというと、 それはやっぱりこの小説の最初の話である「ひたぎクラブ」で阿良々木暦が空から降ってきたクラスメイトの女の子・戦場ヶ原ひたぎを受け止めた時点に化けたのだろうと思います。
 阿良々木暦が怪異と初遭遇した時点ではなく、阿良々木暦は「ひたぎクラブ」以前も以後も次から次へと女の子が空から降ってきてそれを次から次へと受け止めようとするような感じの日常を過ごしているにも関わらず、 阿良々木暦と戦場ヶ原ひたぎのボーイ・ミーツ・ガールの時点で物語が化けるあたりが青春小説だなぁと思ってみたりみなかったり。
 とにかく軸となる高校生・阿良々木暦と高校生・戦場ヶ原ひたぎのコンビが、例えば戯言遣いと死線の蒼や人類最強の請負人、『『魔法使い』使い』と『赤き時の魔女』 、高校生とどんな『願い』も叶える店の女店主、名探偵とFBI捜査官、 あたりと比べて力関係のバランスがいい所為か、作者があとがきに書いている「とにかく馬鹿な掛け合いに満ちた楽しげな小説」という言葉に嘘偽りのない出来になっていると思います。
 残念だったのは、この小説が新レーベル「講談社BOX」で発刊されたため、箱の所為で気軽に持ち運べなかった所為で移動中の合間に読むことが出来ず、読み終わるまでに時間が掛かってしまったことくらいです。
 未読者が店頭で見かけても試し読みも出来ないし、お値段もリーズナブルじゃないし、あちこちで書かれていますけどこの小説がこのレーベルで発刊されたことはメリットよりもデメリットの方が多いように感じます。

 ……ほら、こんな駄文で余談より、「蕩れ」の2文字の方が確実に伝わるでしょう?


(注)
政宗九の視点  2006-01-14 (土)

Something Orange  2006-01-19(木)


 ちなみに、2006年の漫画家は9作で『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』(集英社、廉価版)の荒木飛呂彦と『キャプテン翼 ワールドユース編』(集英社、廉価版)の高橋陽一の両名です。


参考資料甲斐高風のBOOK LIST(連城三紀彦)
参考資料甲斐高風のBOOK LIST(西尾維新)
参考資料漫画家作品年表(荒木飛呂彦)


TVドラマ『ロケットボーイズ』(テレビ東京 2006.04.-2006.06.)
役者風間俊介、小阪由佳、生田斗真、星野源、日村勇紀、松嶋初音(『アキハバラ@DEEP』TBS 2006.06.-2006.08.)
ノミネート全48作
 


TVアニメ『錬金3級 まじかる?ぽか〜ん』(テレ玉 2006.04.-2006.06.)
ノミネート全87作
 魔法使いのゆうま(斎藤桃子)・ヴァンパイアのパキラ(平野綾)・オオカミ少女のりる(生天目仁美)・人造人間の鉄子(「あいこ」明坂聡美)、 この4(5?)人の魔界のプリンセスが何故か人間界の「がらくたはうす」で共同生活を送るというドタバタシチュエーションコメディ。
 或いはぱんつはいてない(時もある)ドロロン閻魔君+怪物くん。
 このアニメを2006年のベストに挙げる人間はほとんどいないと思いますが、 最近録画したアニメやドラマにのめりこめないのか、のめりこみすぎるのか、とにかく視聴にやたら時間がかかってしまうところ、 ぽか〜んとしながら楽しめるこの作品と『THE FROGMAN SHOW』(「秘密結社 鷹の爪」「古墳GALのCoffy」)は本当に救いでした。
 どちらも30分2話構成なのも関係あるのかもしれません。
 ナレーション=透明人間のケイミィ(のみこ)という遊び心や、ウサギなんだか帽子なんだかよくわからないマスコットのタン(羽多野渉)&ジュン(のみこ)、人魚、雪女、狸、幽霊、天国と地獄となんでもありな世界観は楽しかったです。


邦画『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)
ノミネート全16作
 


洋画『ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女(THE CHRONICLES OF NARNIA:THE LION,THE WITCH AND THE WARDROBE)』(2005年:アメリカ)
ノミネート全3作
 世界3大ファンタジー(注)のひとつと言われるC.S.リンクによる全7巻の英国ファンタジーの第1章を映画化。
 第78回アカデミー賞メイクアップ賞受賞。
 ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシーのペベンシー四兄妹が疎開先の屋敷で見つけた衣装だんすは、白い魔女が支配する100年もの間冬に閉ざされたナルニア国に繋がっていた……。

 現実世界と異世界とを丁寧に繋いでいく導入部や、 最近足りなくなっていた私のファンタジー分を補給してくれたグリフォン、セントール(半人半馬)、ミノタウロス、人魚といった異世界の住人達の描写(特に終盤の合戦)には満足しました。
 原作を初めて読んだ時には子供達に素直に感情移入し、偉大なるアスラン(ライオン、声優はリーアム・ニーソン)のことも素直に偉大だなぁと思ったものですが、 そのあたりは今回の映画を観ると子供達の冒険は子供達の成長には結びついているものの白い魔女との戦いには実はあまり結びついていなかったりとか、 アスランが結構表情が情けなかったり石舞台のエピソードが(この作品が篤いキリスト教信仰に基づいたストーリーであることは承知した上で)尊い自己犠牲というよりもルールの盲点をついただけのように見えてしまったりとか、 不満もありました。
 その代わり今回の映画では、原作にはそんな描写はなかったと思うのですが、白い魔女(ティルダ・スウィントン、日本語吹替声優は大地真央)の二刀流のかっこよさに惚れました。
 同じく二刀流だったアスラン軍の近衛隊長・セントールのオレイアスや地味に強かった狼とかサイといった普通の動物達もよかったのですが、彼女の殺陣は段違いに素敵でした。
 ちなみに登場時点では敵か味方かあやふやなキツネが「偉大なるアスラン」と池田秀一ボイスで連呼していたのはあれですか、何か『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に恨みでもあったのですか。
 あと、原作小説を読んだことない方がこの映画を観ると、残りの6章ともあの四兄妹が衣装だんすでナルニア国に行くと思うみたいなのですが、そんなことはありませんのでどうかご安心下さい(?)。


(注) ちなみに世界3大ファンタジーとは「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」「ナルニア国ものがたり」「ハリー・ポッター」「ゲド戦記」のことらしい。よっつあるように見えるけど気にしてはいけません。


アニメーション映画『カーズ(Cars)』(2006年:アメリカ)
ノミネート全6作
・ 車が擬人化した、というか車(や飛行機)以外の生物が存在しない世界。 ピストン・カップでルーキーでありながらチャンピオンを狙うレーサー(=赤いレーシングカー)、ライトニング・マックイーン。 才能はあるが身勝手な性格だった彼がルート66の田舎町ラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまい、レッカー車のメーター達と出会うことで……という物語。

・ 「強いだけではつまらん くだらんぞ」(寂海王『バキ』板垣恵介/秋田書店)という台詞を思い出した。

・ レースの最後のライトニング・マックイーンの行動はゴールしてからすればいいのにとずっと思っていたのだけど、それだと「レース中につついてる」のではなくて「レース後に手助けしている」ことになってしまうからダメなのだと言われて初めて気がついた。

・ メーターのミッション・インポッシブル、もとい、『カーズ2(Cars 2)』(2011年)と『カーズ/クロスロード(Cars 3)』(2017年)あり。 余談だけど後者の感想で見かけた↓がタイトルから内容まで大好き。


Walking Pictures   【感想】「カーズ/クロスロード」は宮崎駿に1000回見せたい傑作映画だったぞ


ゲーム『レッスルエンジェルス SURVIVOR』(CEROレーティングC:15才以上対象、サクセス/プレイステーション2 2006.08.24.)
ノミネート全24作
 





WGC(自団体)ヘビー初代王者 伊達 遥
WGC(自団体)ヘビー2代目王者 永原 ちづる
WGC(自団体)ヘビー3代目王者 氷室 紫月
WGC(自団体)ヘビー4代目&7代目王者 小縞 聡美
WGC(自団体)ヘビー5代目王者 ライラ神威
WGC(自団体)ヘビー6代目&8代目&12代目王者 パンサー理沙子
WGC(自団体)ヘビー9代目王者 ビューティ市ヶ谷
WGC(自団体)ヘビー10代目王者 マイティ祐希子
WGC(自団体)ヘビー11代目&14代目王者 ボンバー来島
WGC(自団体)ヘビー13代目王者 越後 しのぶ
WGC(自団体)ヘビー15代目王者 カンナ神威

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キャラクター山田摩騎(『突攻!メイドサンダー』やぎさわ景一/「チャンピオンRED」秋田書店)
 『死神Death』『ロボこみ』で御馴染みのやぎさわ景一先生が「チャンピオンRED」(秋田書店)で『突攻!メイドサンダー』の連載を開始いたしました。
 その作品のヒロインがメイドの山田摩騎です。
 どんなキャラクターかといいますと、まずは頭の中で理想のメイドを思い浮かべて下さい。
 で、思い浮かびましたらそのイメージは罠なのできれいさっぱり忘れて下さい。
 実際は、作中の言葉を借りると「サラシと木刀の似合う素敵なお嬢さんだぞ」といった感じの女性で、 ポニーテール+サラシ+ヘソ出し+特攻服でナイスバディ(というか16歳男子高校生の主人公よりもガタイがいい)で改造単車を乗り回しております。
 とはいえ、本人曰く「サンダース家政婦派遣所の看板背負ったァ 家事上等の正真正銘冥怒だぜっ!!」だそうで、 その証拠にちゃんとメイドカチューシャ(ホワイトブリム)は着用しておりますのでどうかご安心下さい。
 単車にさりげなく「御主人様羅武」と書かれていたりと、可愛いところもありますし。
 あ、気づいてない方はいないと思いますが、どうして「サンダー」かというと、「山田」だからです。

 尚、一応2006年の男性キャラクターも一人挙げておくと、総統(『THE FROGMAN SHOW』「秘密結社 鷹の爪」 テレビ朝日 2006.04.-2006.06.)になります。
 中小企業の社長のような悲哀を漂わせながらも、かつてない動機(注)で世界征服を目論む彼に、どうか幸多からんことを。


(注) ●2006年6月8日の日記


参考資料漫画家作品年表(やぎさわ景一)


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