『1年の計は元旦にあり』


甲斐高風



「キョウコさん、あけましておめでとうございます!」
「……おめでとう」
「新年、それは世界という名の書物の新たな1ページ、そこに記される運命の美少女……水野佑紀ちゃんでーす!」
「はいはい」
「あーっ、今うるさいのが来たなーって顔してましたよーっ」
「ぎくっ」
「いま『ぎくっ』て言ったでしょ」
「い、いや、そんなことは……いつもと違う格好だから見違えただけよ」
「新年らしく、振り袖で決めてみました」
「似合ってるわよ」
「えへへっ、素材がいいんだもん、当然よねー」
「そこ、調子に乗らないの」
「ちょっと派手すぎませんか?」
「いつもの方がよっぽど派手なんじゃないの?」
「ゆきちゃんの普段は本当に派手だもんねー、ねぇ、あれってやっぱり趣味なの?」
「え……えぇ、いや、まぁ、その……」
「ところでキョウコさんはいつもとおんなじ格好ね」
「うるさいうるさい、仕事中なんだから、仕方ないでしょ」
「でも、キョウコさんほどこの制服が似合う人もいませんよね」
「ゆきちゃんに言われてもなぁ……」
「あはははっ」
「……それで、結局のところ何しに来たわけ?」
「これから初詣に行くところなんです」
「ふぅん」
「キョウコさんも一緒に行こうよ」
「だから仕事中なんだってば」
「いつもサボってるって評判ですけど?」
「……いつもサボってるから今はサボれないの」
「せっかくわざわざ誘いにきてあげたのにぃ」
「はいはい、ありがとうありがとう、気持ちだけもらっておくわ」
「なんとなく心がこもっていないような……」
「気のせいよ」
「そうかなぁ?」
「それよりも、早く行かないと、これからますます混むと思うけど?」
「それもそうですね。では、そろそろ行きますね」
「そうしてくれる?こっちもこれから混むと思うし」
「じゃあ、お土産にユキちゃんが大吉のおみくじ買ってきてあげるね」
「いや、おみくじって自分で引かないと意味ないんじゃ……?」

 御崎恭子はゲームセンターYou&Me神用賀店から水野佑紀と伊藤由紀の2人を送り出しながら、今年もいつもと変わらない、ドタバタな一年であることを確信するのであった。


『1年の計は元旦にあり』あるいは『女3人寄れば姦しい』、おしまい)


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