キャプテン・ラヴ RPG用 シナリオ
「愛のミレニアム・ファイヤー」
*このシナリオは、2000年12月26日に京都で行われたものです。
◎PC設定◎ ……詳細設定
PC1:2回生(男)。ラブラブ党京都支部所属、幹部候補生。主人公。
PC2:2回生(女)。PC1やヒロイン(沙織)の友人。
PC3:大学院生(M1、男)。ラブラブ党京都支部所属。PC1の部隊長。ヒロインの兄。
(以下は追加PC)
PC4:2回生(男)。PC1、PC2やヒロインの友人。かつてラブラブ党に論撃されて恋人と別れた。
PC5:ラブラブ党本部所属。PC1の高校時代の親友(男)。
<あらすじ>
舞台は2000年12月、京都。PCたちは京都市内の某大学の大学生及び大学院生。
京都では、世紀越えイベント「京都21」の準備が着々と進んでいた。しかしそれに便乗して世紀の送り火に「永遠の愛」を誓う誤った恋愛観の持ち主も多いとの情報を得たラブラブ党京都支部長の大森教授は、PCたちの所属する裏部隊に集中論撃を指示する。特にPC1は幹部候補生として、今回の作戦での活躍いかんでは、一部隊を任せることもある旨伝えられる。そして、世紀越え集中論撃の前哨戦として、「鴨川等間隔論撃」が発動された。
等間隔論撃当日、待ち合わせ場所に向かうPC1の目に、変な男に絡まれている沙織の姿が目に留まる。沙織は大学の友人であり、また部隊長のPC3の妹である。そしてPC1にとって、少し気になる存在でもあった。どうやら男は、沙織をナンパしようとしているらしい。沙織が嫌がっている様子を見たPC1は、男に論撃を仕掛け、撃退する。沙織はPC1に礼を言い、沙織と待ち合わせていたPC2らが現れると、PC1は「用事があるから」とその場を去る。
鴨川河畔に群居するカップルたちに論撃を仕掛けるラブラブ党。沙織とPC2はその様子を目撃する。鴨川等間隔論撃は十分な成果を得て終了する。
その晩、PC1は沙織から電話で「今日のお礼がしたいから」と、クリスマス・イヴに家に来て欲しいと告げられる。その日は、親は用事で外出しているらしい。承諾すると、PC2なども呼んでパーティーをするのだと言われる。
鞍馬にある沙織の家でパーティーをしていると、PC3の友人が入り込んでくる。彼は「京都21」の一環として大晦日に市役所前で行われる鞍馬の火祭りに、経験者であるPC3や沙織に参加して欲しいという。沙織はその話に異常に怯え、PC3は友人を追い返す。
夕刻、沙織は京都駅ビルのクリスマス・ライトアップが見たいと言い出し、駅前に繰り出すことに。しかし、PC3のPHSに大森教授から呼び出しの電話が入ったりして、人混みの中でPC1と沙織は2人っきりになる。2人で歩いていると、商店街のクリスマス・セールのサンタから「お似合いのお二人に」と安物の指輪をプレゼントされる。
帰り道、2人の前にラブラブ党のクリスマス・カップル撃滅部隊が現れて、論撃を仕掛けてくる。PC1は誤解だと思いつつも、沙織の前で正体を明かすわけにもいかず、これを論撃で退ける。
数日後、PC1に「大晦日の年越しイベントを一緒に見に行こう」と沙織から誘いが入る。世紀越え集中論撃と時間帯が重なることから躊躇するが、沙織は「約束だからね」と押し切る。直後、PC3のところに大森教授から連絡が入り、PC1と沙織が約束したのと同時刻に集合して論撃を開始するように指示が入る。
PC1はラブラブ党と沙織との間の板挟みで憂悶する。愛の共産化とは何なのか、沙織に感じている感情は愛なのか、クリスマスの日に何故「カップルの男」の立場で論撃できたのか、ラブラブ党は本当に正しいのか……。そしてPC1は、ラブラブ党との絶縁を決意する。
大晦日。約束の時間に沙織との待ち合わせ場所に着いたPC1は、そこで信じられないものを目にする。おもむろにコートを脱ぎ去った沙織の胸元には、ラブラブ党の党章が光っていた。実は沙織はラブラブ党の党員。幹部候補生の思想が堅固であるかを試すために、大森支部長の命でPC1に接近、誘惑していたのだ。
五山に送り火がともり、市役所の前に火祭りの炎が揺らめく、その炎のような熱い魂をぶつけ合う論撃の幕が切って落とされる。だがその指には、あの時の指輪が光っていた……。
★論撃設定★
【イベント】
1)世紀越え論撃指令 大森研究室
党員PCは大森支部長に呼ばれ、彼の研究室に集められる。そこで支部長から、「京都21」プロジェクトの概略と、これに便乗するバカカップルの動きについて説明される。こうした男女に正しい恋愛観を教え、来るべき世紀を愛の共産化社会の実現された世紀にするべく、「世紀越え論撃」の指令がPC3の率いる部隊に下される。
また、PC1に対しては今回の作戦での活躍によって、一部隊を預かる幹部への昇格も考えている旨伝え、併せて世紀越え論撃の前哨戦として恒例の「鴨川等間隔論撃」をするように指示する。
要点
・大森支部長のキャラクターの提示、ラブラブ党の価値観(愛の共産化)の再確認。
・「京都21」について概略説明と「世紀越え論撃」の指示。
・PC1に幹部昇格の話があることを伝える。
・「鴨川等間隔論撃」を指示。
2)ナンパ撃退 京阪四条駅(地下)?
等間隔論撃当日、待ち合わせ場所に向かうPC1の目に、変な男に絡まれている沙織の姿が目に留まる。男は沙織をナンパしようとしているが、沙織は嫌がっている。PC1に男を追い払うようにし向ける。追い払い行動は「論撃」の要領で。
撃退に成功すると、沙織はPC1に礼を言う。沙織の表情の描写や口調などに気を使って、PC1に「気のある」素振りを見せること。しばらくしたら、沙織と待ち合わせていたPC2らを登場させ、シーンを切る。
要点
・PC1に沙織を守ったという「実績」を作らせる。
・沙織の描写や口調などで、PC1に好意を抱いていることを言外に伝える。
・シナリオ序盤で「論撃」を体験させる。
・特にラブラブ党との関係によらなくても、論撃処理する事をプレイヤーに分からせる。
3)鴨川等間隔論撃 鴨川河畔(四条大橋近辺?)
京都市の東部を北から南へ流れる鴨川。その鴨川の河畔に腰掛ける恋人たちは、誰に何を言われたわけでもないのに、自然と等間隔に距離を取っている、という「鴨川等間隔の法則」が報告されたのは今から何年前だったか。誤った恋愛観を正そうともせず、道行く人々を不快にする等間隔カップルたちに、ラブラブ党が愛の鉄槌を下さずにいるはずがない。
というわけで、等間隔論撃だが、実はシナリオ上重要なシーンではない。「鴨川等間隔論撃」というフレーズが気に入ったので採用したまで。ちなみに、実際のセッションでは等間隔論撃中のラブラブ党にPC4が介入してきたおかげで面白いシーンになった。
要点
・ラブラブ党的論撃シーンをやってみる。
4)クリスマスパーティーのお誘い (電話処理)
沙織からPC1のところに、「お礼がしたいから」という理由で電話がかかってくる。内容は、クリスマス・イヴにパーティーをするから参加しないか、というものだが、PC1を「試す」ために聞き方には注意すること。初めに「イヴの予定って、入ってる?」、「よかったら、さ、私の家、来ない?」、「……その日、お父さんもお母さんもいないから、安心していいよ」というふうに、さも沙織の家に2人っきりになるかのような表現で惑わす。PC1が応じないようなら、みんなでパーティーをやろうという話だということを打ち明けて、話に乗りやすくする。
PC1が応じる構えを見せたら、他のPCたちにも参加するように話を回す。「お兄ちゃんもいるけど、いい?」という形で、PC3も参加させること。
要点
・PC1と沙織の会話で、PC1の心を測るとともに、揺さぶる。
・クリスマスパーティーの参加の約束を取り付ける。
5)クリスマスパーティー 沙織の家(左京区鞍馬)
沙織の家でパーティー。PCは全員参加させる方向で。PC2とPC3が顔をあわせるので、この2人の仲が進展するように手を打つべき。PC3の友人が乱入し、大晦日の鞍馬の火祭りの話を切り出す。この会話で沙織の過去に火祭りと関連して何かがあったことを示唆、プレイヤーに印象づけること。また、全体としてパーティーらしい楽しげな雰囲気を演出する描写や小イベントを用意して、PC間の会話を活発化させる。
PC2がPC3との過去を清算する方向に動き出させるのは、この日を置いてない。ここの「過去」の話がPC1などに早く伝わるように、情報露出のさせ方を考えておく。
なお、次のシーンに繋ぐために沙織から「ライトアップが見たい」と言い出させる。その必要上、パーティー本体は午前10時から午後4時くらいと考えられる。
また、PC3の友人を他のPCと親しくさせることで、彼を通じて沙織の過去の情報を入手できるような可能性も作っておくとよい。
要点
・「火祭り」の話で沙織が嫌がる様子をプレイヤーに印象づける。
・PC2とPC3の仲を刺激する。
・パーティーらしさを演出する。
・駅前への移動を行う。
6)ライトアップ 京都駅前商店街(烏丸七条?)
駅前商店街の雑踏の中で、クリスマス・セールの追い込みをしている客引きサンタからビラの類と一緒に小箱を渡される。この時、PC1と沙織が2人で歩いているようなシチュエーションを作り出し、PC1の手にその小箱を握らせる。サンタからは「メリークリスマス。お似合いのお二人へ」とか「恋人たちに」とか、何でもいいがその手の言葉を喋らせる。沙織はそれを聞いて、「私たちってそう見えるのかな?」とPC1に問う。その時の表情や口調の描写には意を払う。彼女は嬉しいような恥ずかしいような雰囲気を漂わせているが、彼女の様子を本当に注意深く観察するならば(観察系の判定のかなり高い達成値を要求する)、PC1を「試している」ような気配は察せられる。
箱の中には安物の指輪が入っており、PC1にはおよそ役に立つ代物ではない。「それ、どうするの?」などと沙織に言わせて、沙織にPC1からプレゼントするように誘導する。指輪が沙織の手に渡らない場合、大晦日の日に彼女が指輪をしてくることは出来なくなり、PC1としては論撃のポイントを1つ失うことになる。
PC1と沙織の二人きりのシチュエーションを作り上げるために、他のPCを排除させる方法としては、PC3には大森支部長からの電話、PC2には沙織から「2人っきりになりたいから協力して」と耳打ち、などが考えられる。なお、PC4以降がいる場合は、PC2に彼らの排除も頼むとよい。ちなみにPC3に大森支部長から電話が入るのは、沙織の要請による。
ライトアップそのものはどうでもよいので、簡単な描写でさらっとながす。なお、京都市の場合実際には繁華街は「駅前」ではなく、「四条河原町」(または単に「四条」)であり、そちらへ行ってもよい。
要点
・PC1と沙織の二人きりのシチュエーションを作り上げる。
・サンタから2人にプレゼントを送る。
・沙織とPC1の間で言葉のやりとりをして、PC1を揺さぶる。
・PC1からのプレゼントとして沙織に指輪を渡す。
7)サンタと論撃 帰り道
上記イベントの帰り道、ラブラブ党に遭遇する。クリスマスにいちゃつくカップルに恨みを持つラブラブ党クリスマス・カップル撃滅部隊のサンタ・グラースである。サンタクロースの恰好をしているが、背中に背負った袋には大きくラブラブ党の党章が描かれ、何よりも印象的なのは兇悪そうなサングラスをかけていること。
彼に論撃されたカップルがバラバラに逃げ出すのを目撃し、沙織が「アレ!」とサンタ・グラースを指さす。ちなみに、この時点では特に2人きりでなくても構わないが、2人きりで歩いている場合、サンタ・グラースはPC1と沙織を「クリスマス・カップル」と認定して論撃を仕掛けてくる。なお、サンタ・グラースはPC1が党員であることに気付いていないことは、明言してよい。
沙織はPC1を頼りにするような様子を示して、PC1がサンタ・グラースと論撃をしなくてはならないように追い込む。
要点
・サンタ・グラースと論撃させる。
・PC1にラブラブ党を否定する論理を口にさせる。
実際にプレイした感じでは、ここまでを前半のセッションとして、全体を2度のセッションに分けて行った方がよいかも知れない。
クリスマス以降、大晦日までの間には、PCたちに自由に動いて貰い、情報収集と意志決定をさせる。基本方針として、PC2とPC3の間の過去に決着をつけさせること、PC1にラブラブ党を離党する決意を固めさせること、沙織の過去の心の傷を明らかにさせることを目標にする。現状のままではPCの行動に介入出来る適当なNPCが不足しているので、適宜補うようにする。
8)大晦日の約束 (電話処理)
沙織からPC1に、世紀越えイベントを一緒に見に行こうとの電話が入る。今度は正真正銘、2人っきりで、との話。沙織はPC1との電話の最後に、「約束だからね」と付け加える。PC1が承諾すれば、すぐにPC3のところに大森支部長から指示が入る。世紀越え論撃の行動細目について、集合場所と時間が指示されるが、その時間は沙織とPC1が約束したのと全く同じ時間、同じ場所。沙織が支部長に報告してそう設定させたものである。PC3が何を言っても、変更は聞き入れられない。
要点
・沙織とPC1の間で世紀越えイベントを一緒に見る約束をさせる。
・「約束」をキーワードとして必ず使うこと。
・ラブラブ党の世紀越え論撃のための集合も、同時刻・同場所であること。
PC1がどの時点でラブラブ党離脱の腹を決めるか、それをいつ明らかにするかによって、その後の展開は変わる。PC3に対してPC1側から意思表明の論撃を仕掛けるようであれば、させてよい。大晦日当日まで隠そうとするようであれば、当日に処理する。基本的にプレイヤーのシーンメイクを採用してよい。
なお、PC2については以降、自分の方からシナリオに絡んでこないと出番はない。
9)ミレニアム・ファイヤー 京都市役所前(御池河原町)
PC1が約束の場所に行くと、沙織とラブラブ党員たちとは少し離れた場所にいる。PC1がどちらに先に声をかけるかは、後で沙織との論撃に関係してくる。沙織に先に声をかけた場合、沙織はPC1と一緒に歩き出してラブラブ党の方へ移動、ラブラブ党の方に先に話しかけた場合、PC3らとの会話中に沙織が接触してくる。
なお、この時点では党員たちもみな普通の恰好をしている。この後、どこかで論撃コスチュームに着替えるのだろう。原作では「物陰で着替える」ことになっているが、演出的にPCや沙織などは瞬間的に着替えてよいことにする。沙織の場合、コートで登場し、コスチュームはその下に着込んでいるという解釈でもよい。
なお、クリスマスの時に指輪を沙織に渡していた場合、沙織の指にはその指輪が光っている。
☆沙織に先に接触した場合:
PC1を見つけると、「どうして……」と小さく呟く。哀しいような嬉しいような、不思議な表情を一瞬だけ見せるが、一度軽く頭を振ってそのような表情を消す。2人で歩き出し、すぐにPC3を見つけて、「あ、お兄ちゃん。彼ね、これから私とデートなの。どう思う? この人、ラブラブ党員のくせに、党の活動よりも女の子との約束を優先するのよ」といった感じでPC1をPC3の前に「突き出す」。その後、PC3にPC1を論撃するように言う。
なお、PC3が自分からくってかかり、PC1との間で論撃になるようなら、沙織はその時点で正体を明らかにしなくてもよい。
☆ラブラブ党(PC3たち)に先に声をかけた場合:
沙織の方からラブラブ党が集まっているところへやってきて、「どうして(PC1)がお兄ちゃんと一緒にいるの?」と声をかける。PC1に、2人で行こうと露骨に誘いかけ、決断を迫る。PC1が党より沙織を取るという発言をし、PC3との間で論撃になるように誘導する。
いずれの場合も、PC3との論撃が終われば(PC1が勝てば)、沙織との論撃となる。沙織はコートを脱ぎ捨て、ラブラブ党ラブ・アサシンの「ファイヤー・スコーピオン」として論撃を挑んでくる。
要点
・PC1が一貫して沙織に誠意を示す場合、沙織は動揺の色を見せる。
・出来れば沙織の正体を現さずに、PC1とPC3の間で論撃が起こるようにする。
・火祭り、送り火の描写を時々加え、クライマックスらしさを演出する。
10)エピローグ
PC3、沙織(ファイヤー・スコーピオン)との論撃に勝利するころには、すでに五山の全てに灯がともっている。おそらく沙織も心を開き、PC1との愛を信じるようになっているはず。
遠からず、市内各地の寺から除夜の鐘の音が響きはじめる。年越し、いや、世紀を越える瞬間が近づく。
ラストシーンの演出は、主としてPC1に任せるが、適当なシーンメイクが出来ない場合の例を挙げる。沙織に、「さよなら20世紀、さよなら***なわたし」と呟かせる。この時、「***」にはPC1との論撃の過程で出てきた、適当な言葉を使うとよい。例えば、PC1が「君は愛すること、愛されることに臆病になっているだけだ!」というような論撃をしていたとすれば、「臆病なわたし」といった具合に。
なお、PC2のエピローグについても、主としてPC2自身の意向を尊重する。