君はデンマークを見たか!? 2010



第0回:君はデンマークを見れるぞ!(2009年12月4日)
 2010年(第19回)南アフリカサッカーワールドカップの1次リーグ組み合わせ抽選会が行われた。
 以前から弟と日本の組み合わせが決まったら「見えたね」と言ってにやりと笑う(見えたのがベスト4なのか1次リーグ敗退なのかはおいておいて)という約束をしていたので、電話で話しながらテレビ中継を観ていただが、 その結果、日本はグループE(オランダ・日本・カメルーン・デンマーク)に入ることとなり、2002年(第17回)韓国・日本大会では実現しなかったデンマーク戦の日本地上波放送がこの時点で内定するという予想外の事態となった。

 早くも日本では1次リーグ突破の為の1勝1敗1分理論が語られているようだが、 「アイルランドとのヨーロッパ予選プレーオフにおけるティエリ・アンリの決勝点につながる神の手に対するフランスへの事実上の制裁措置がなければシード(第1ポット)から外れていたという噂もある豊富で魅力的なタレント陣を擁するオランダ(FIFAランキング3位)」 「初めてホームでワールドカップが行われるアフリカのサミュエル・エトー率いるカメルーン(FIFAランキング11位)」 「ポルトガル・スウェーデンをヨーロッパ予選グループAできっちり仕留めての1位通過+1986年(第13回)メキシコ大会、1998年(第16回)フランス大会、日本・韓国大会と1次リーグ通過確率100%を誇るしたたかなダニッシュ・ダイナマイト、デンマーク(FIFAランキング26位)」 程度の相手に3連勝できないようでは日本(FIFAランキング43位)が目標としているベスト4は危ういのではないだろうか。

 なお、弟がこの組み合わせ抽選会の結果、「全く見えない」と呆然と呟いていたことを付記しておく。

 ちなみに、日本戦の日程は2009年6月14日カメルーン戦(ブルームフォンテーン)→2009年6月19日オランダ戦(ダーバン)→2009年6月24日デンマーク戦(ルステンブルク)で、各地の標高は1400m→0m→1500mであるらしい。 流石南アフリカ大会という感じである。日本に限らずどの国もコンディション維持も難しいものになると想像される。

第1回:デンマーク0−2オランダ(2010年6月14日ヨハネスブルグ)
 初戦の相手は豊富で魅力的なタレント陣による攻撃力が売りのオレンジ軍団・オランダ(FIFAランキング4位、ちなみにデンマークは36位)。
 オランダは左サイドのMFアリエン・ロッベンが欠場したものの、デンマークも主将であるFWヨン・ダール・トマソンもMFダニエル・イェンセンも欠場。
 それでも右膝を負傷していたDFシモン・シェアー、右股関節を負傷していたFWニクラス・ベントナーという若き攻守の要、腕を負傷していた守護神GKトーマス・ソーレンセンといった出場が危ぶまれた面々が出場したことでオランダよりも層が薄いなりになんとかデンマークも形を整えて試合に挑むことができ、 オランダのポゼッションサッカー 対 デンマークのカウンターサッカーというお互いの持ち味を発揮した展開で前半戦は0−0のまま終える。
 しかし、後半1分、DFシモン・ポウルセンのヘディングクリアがDFダニエル・アッガーの筋肉質な背中で跳ね返ってデンマークゴールの右隅に奇麗に飛び込むオウンゴールとなる最低の形で後半戦が始まる。
 これで完全にゲームプランが狂ってしまったデンマークは、こうなると南アフリカで行われる11:30からの試合、標高1700m、観客どころか観客席までオレンジ色の完全アウェーのサッカー・シティスタジアムとデンマークが叩き潰されるのに充分な条件は整ってしまっていた。
 後半40分、司令塔MFヴェスレイ・スナイデルの縦パス→後半投入されたFWエライロ・エリアが飛び込んでシュート→ソーレンセンの手に当たってボールはかろうじてポストに→しかしきっちりとFWディルク・カイトが詰めて2失点目。
 直後の後半43分、同じく後半投入されたMFイブラヒム・アフェライのシュートがゴールに飛び込む寸前でシモン・ポウルセンの必死のクリアでなんとか3失点目は免れたものの、そのまま試合は終わった。
 ちなみにベントナーは怪我の影響を考慮して残り2試合に温存したのか60分間の出場制限でもあったのか後半17分で途中交代した。

 そしてブルームフォンテーンで行われた試合はMF松井大輔のクロスをMF(なのだけどこの試合ではワントップの)本田圭佑が決めて日本1−0カメルーン。
 日本は自国開催以外でのワールドカップ本戦での初勝利を飾った。
 結果、日本は2位、デンマークは4位での発進となった。

グループE勝点得点失点得失点差
オランダ   3 2 0 +2  
日本   3 1 0 +1  
カメルーン  0 0 1 −1  
デンマーク  0 0 2 −2  

第2回:デンマーク2−1カメルーン(2010年6月19日プレトリア)
 2戦目の相手は不屈のライオン・カメルーン(FIFAランキング19位)。
 初戦敗者同士でお互い後がない状況で行われたこの試合、デンマークが主将FWトマソンが(後半41分で途中交代するまで)先発出場、MFイェンセンも後半から出場と、満身創痍と言われていた面子を一通り揃えると(余談だが大会直前にはモアテン・オルセン監督も風邪で休んでいた)、 カメルーンもこの非常事態にフランス人監督ポール・ル・グエンとFWサミュエル・エトーの内紛状態の煽りなのか初戦出場していなかったル・グエン派のベテランDFリゴベール・ソングの甥、MFアレクサンドル・ソングが先発出場し、ベストメンバー同士での対決となった。
 前半10分、DFクリスティアン・ポウルセンの自陣での不用意すぎるパスをFWピエール・アシル・ウェボがカットするとこれをエトーが決めてカメルーンが先制。
 こうなると20:30からというのはともかく標高1200m、初のアフリカ大陸開催で対戦相手はアフリカの実力者・カメルーン、しかも南アフリカ共和国の首都はバースフェルドスタジアムでの試合、鳴り響くブブゼラという完全アウェー状態でデンマークが叩き潰されるのに充分な条件は整っていた。
 しかし前半33分、自陣で味方からのスローインを受けたシェアーのロングフィード→右サイドのFWデニス・ロンメダールがトップスピードで飛び出しトラップからワンタッチでのクロスボール→ベントナーの「SSS(スピーディスライディングシュート)」という速攻で同点弾。
 その後前半終盤5分ではお互いにアグレッシブすぎる展開を見せるが得点には至らず両エースが1点ずつ奪った同点のまま前半戦を終える。
 後半16分、カウンターからまたしても右サイドを駆け上がったロンメダールがボールを受けて中央に切り返してからのシュートをカメルーンゴールの右サイドに打ち込み逆転。
 その後はデンマークの堅守がカメルーンを阻み、そのまま試合は終わりグループBのギリシャ2−1ナイジェリアに続き今大会数少ない逆転劇はまたしてもアフリカ勢の逆転負けという結果となった。
 ただし堅守の代償としてオランダ戦に続いてシェアーがイエローカードをもらっており累積2枚目、シェアーは日本戦には出場できないことになった。

 そしてダーバンで行われた試合は日本の見せ場も多かったがMFスナイデルの強烈なミドルシュートで日本0−1オランダ。
 結果、大会一番乗りでオランダのトーナメント進出とカメルーンの1次リーグ敗退が決定。
 最終戦の直接対決で日本が勝つか引き分ければ日本、デンマークが勝てばデンマークがトーナメント進出というわかりやすい状況となった。

グループE勝点得点失点得失点差
オランダ  6 3 0 +3  
日本  3 1 1 ±0  
デンマーク 3 2 3 −1  
カメルーン 0 1 3 −2  

第3回:デンマーク1−3日本(2010年6月24日ルステンブルグ)
 3戦目の相手は組織的な守備といいながら全試合において運動量で相手を上回る泥臭さも持つ忍者部隊・日本(FIFAランキング45位)。
 勝たなくてはいけないデンマークは序盤からシャドーストライカー・トマソンを中心に積極的に仕掛ける。
 しかし前半17分、本田の直接フリーキックでの無回転シュートがデンマークゴールの右隅に見事に突き刺さる。
 不運なオウンゴール、不用意すぎるパスをカットされての失点、直接フリーキック、と完全に切り崩されたパターンがないものの全試合で先制点を奪われては欧州予選を10試合5失点に抑えた堅守も今は昔。
 その後は互角の展開を繰り広げていたが前半30分、今度はMF遠藤保仁の直接フリーキックでのシュートがデンマークゴールの左隅に見事に突き刺さり、そのまま0−2という展開以上の圧倒的に日本有利な状況で前半戦を終える。
 標高1500メートルの高地+伸びる公式球ジャブラニの組み合わせにも関わらず直接フリーキックが2本決まるのはワールドカップでも40年ぶりという事態にソーレンセンがハーフタイム中も練習をしていたという話に涙を禁じえないまま後半戦が始まる (ちなみにJリーグは今季公式球としてジャブラニを採用しているが、それはロシアのCSKAモスクワ所属である本田には関係ない)。
 後半36分、パワープレーを仕掛けていたアッガーが主将であるDF長谷部誠との競り合いで倒れたのがPKとなり、トマソンが蹴ったボールは今大会スーパーセーブを連発しているGK川島永嗣が弾いたものの、こぼれ球をトマソン本人が左隅に押し込んで1点を返すことに成功する。
 これでトマソンはデンマーク代表記録としてポウル・ニールセンに並ぶ52得点目。
 しかしこの際再度ボールを止めようと飛び込んできた川島を飛んでかわしたトマソンは右足を痛めてしまうが、 既にデンマークは2失点目を奪われた直後の前半34分から後半18分までにMFヤコブ・ポウルセン、怪我をしていた長身FWソーレン・ラーセン、将来を担うファンタジスタMFクリスティアン・エリクセンと早々に交代枠3枚を使いきってしまっていた為に打つ手がなかった。
 その為他の面子が前がかりになっていた隙を突かれた後半42分、本田の突破からのパスを受けた後半投入されたFW岡崎慎司が左隅にダメ押しの3点目を決めて、そのまま試合は終わった。
 個人的には、カメルーン戦でもそうだったのだが終始走り回りシャドーストライカーの本領を発揮して何度もフリーになる従来の凄みを見せつつも最後のシュートが決まらないトマソンに2002年の時との違いを感じて感慨深いものがあった。

 そしてケープタウンで行われた試合はエトーがPKにより2試合連続で得点したもののカメルーン1−2オランダ。
 この結果、Eグループはオランダが1位、日本が2位で決勝トーナメント進出。
 デンマークはワールドカップ本選出場4回目にして初めての1次リーグ敗退、カメルーンはアフリカ勢唯一の3戦全敗での1次リーグ敗退となった。

グループE勝点得点失点得失点差
オランダ 9 5 1 +4  
日本 6 4 2 +2  
デンマーク3 3 6 −3  
カメルーン0 2 5 −3  

 ここまでデンマークや甲斐高風を温かく見守って下さった皆様、本当にありがとうございました。
 次回2014年(第20回)ブラジル大会で、デンマークが地区予選を突破でき、甲斐高風がまだデンマークを応援しており、しかも当サイトが健在である可能性はあまり高くないと思われますし、再び日本と激突する可能性に至ってはほとんどないと思われますが、その節にはまたよろしくお願いいたします。

 追記。
 2010年6月29日発売「ヤングアニマルあいらんど」no.12(白泉社)の「ふたりサッカーいとをかし」(文・倉敷保雄+絵・あらゐけいいち)によると自国生まれの選手が100%なのは「イングランド、スペイン、デンマーク、スロバキア、ギリシャ、ホンジュラス、ウルグアイそしてブラジル。」の8チームしかないそうだ。


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