DMの元ラブ・キャバリアーズNo.1体験記録帖

 まず、随分遅くなってしまって申し訳ありません。「キーボードが外付けの、繋がってないノートパソコン」のユーザーのため、実家に帰っている間は一切の文書作成が不可能なんです。そんなこんなでプレイ後1ヶ月経ってしまった少々旬の過ぎたプレイレポート。もし宜しければお付き合いください。


0) はじめに〜全体的な印象として

 実は、プレイ前の段階でも既に某所で「論撃バトル」の様子については見学した事があったので、この作品の「横に3ヤードほどずれたノリ」というのは判っていたつもりでした。ただ、それでも「スタートの時点で彼女がいて、その彼女との絆を試される」、というコンセプトをどこかで見た気がして、そのコンセプトの作品を必死で思い出そうとしたりしたわけです。で、その答えがリーフの「ホワイトアルバム」。ああ、体験あるなあ、要するに切なさを感じ取れればこのゲームの勝利者になれるのか、と考えて…後悔しきり。刃物に備えていて、鈍器による激しい殴打をくらった気分になりました。
 例えとして「夜の恋愛ドラマ」を出すのが適当な気がします。同じカテゴリーでも8時スタートのものと9時or10時スタートのものとでは全然傾向が違いませんか?前者は割とドタバタで「恋」を一生懸命だけど面白おかしいもの、として描いたもの(頻繁に非現実的な設定が付随してくる)なのに対して、後者は「恋」を綺麗で良くいえば切ない、悪く言えば感傷的な書き方をしてくる。僕は基本的に後者の作品ばかりやってきたせいか、この種のゲームをやるときは「綺麗で切ないもの」に対する感覚を研ぎ澄ますわけですが…このゲームが前者だった事にうかつにも気がつかなかった!なんてこった!しかも、ただ冗談みたいな話を流しているだけでなく、「恋に一生懸命になるあまり恋愛が綺麗でなくなる」ところまで書いてある。新鮮でした。これで、絵が好みだったなら申し分無かったのですが…。特にカミィなんかに顕著ですが、立ち絵の目つきが怖くありませんか?ウィンドウの方の絵は結構好きなんですが。
 長々となりましたが杉江の「俺はただ馬鹿やってるんじゃねえ!本気で馬鹿やってんだ!」というのがこの作品を象徴するような台詞かなあ、というのを締めにしておきます。

1) 愛の接近遭遇!

「なんじゃこりゃぁ〜!」以上。…手抜きはいけませんね。じゃあ核心を突く事にしましょう。「この『むかつくアヒル』は果たしてなんだろう?説明書にはヒロインとか書いてあるけれど…冗談だろ?」と、こういう事です。雨の中の出会いはともかく、傘を帰しにいったらしょうも無い冗談を言ってくるし、仕方なくそれに合わせたら馬鹿呼ばわりしてくるし。馬鹿って言う奴が馬鹿なんだぞ、くそっ。しかもエンクミのアヒルみたいな声で言ってくるのがなお頭に来る。…コホン。まあ、性格上の問題は置いておきましょう。でも、あの東京タワーはなに?と、まあそう言うわけでゼロは愚か、マイナススタートと言う前代未聞の恐ろしいヒロインと共に、彼は波瀾のストーリーに漕ぎ出してしまいました。その運命やいかに!
 ゲームの方では「ゴキブリ騒動」とか、お付き合いしてるときに気まずくなるシチュエーションでは着実に選択肢を選ばせてくるとか、論撃の難易度のほどよさとか、良い造りとは思います。尤もこれ以降、総じて選択肢で困った事は一度も無いのですが。
補足:小西寛子のファンのせいか、竹を割ったような性格のためか、開幕から香織にいい雰囲気を感じています。
その2:「Do Stop 恋、英語風に言うとドスコーイ」って…なに考えてるんだろう?
その3:オープニングの「悪夢」の正体は何だったんでしょう?クリアしても判らない謎です。

2) 愛のクリパン繁盛記

 さて、ようやく本編です。しかも開幕は「ぢょしこーせい」ときました。そりゃあもう、やる気にならなきゃ嘘ってもんです。もんだったんですが…正直、扱いに困る。神原のどか、という少女は恋の実りを手にするには幼すぎるんです。良かれと思ったら早朝だろうが何だろうが呼びつけてくるし、「もう90秒も手が触れ合ってない」とか拗ねてみたり。恋の主役が「2人」じゃなくて「わたし」なんですね。こういう子は、上手に扱わないと「幸せ慣れ」を起こされた途端に冷淡になる、と思うと、つまりエンディング以降のことを考えると安心して萌えられない。結局「愛美よりはいいか、全身から『すきっ』ていうオーラを発生させてくれてるし」と、のどかエンドになだれこんだのですが…。そう、ここでまた愛美に減点で、彼女から「好意」を感じ取れないんですね。いっつも文句ばかりで可愛げの一つも見せやしない。正直、パスです。
 ああ、満腹先生も書いていましたが「もう先生は私の愛情をお金でしか買えない人に戻っちゃうんだからね」という台詞にはかなりぐらりと来ました。これだけの事を言える子だったのかぁ、と、少し悲しくなりました。何故だか知りませんが。
補足:塩入コーヒーは勘弁して!経験あるけど、とてもつらいものです。
その2:クリームパンを手に入れる必要を作ってくれた永堀教授の姿を見たとき、「脱党して良かった」と心から思いました。少し悲しくなりました。理由は簡単ですが。
その3:主人公のクリームパンの誉め方が非常に納得いきません。あれじゃあプレイボーイですよ。
その4:早速、気分的に負けな論撃1つめです。「スカートをめくった挙句半裸になって勝利」では…。

3) 愛のギターオンファイアー!

 さて、塩入コーヒーの君ことカミィです。結果から先に言うと僕の中では香織と並んで最強格の存在なので、こんなに早くこられてしまったばかりに以降のヒロインが霞んで困りました。だってそうでしょう。「最初拒絶してる子の心を徐々に開いていって最後にはなくてはならない人になる」というのは、確実に自分を必要としてもらえるから、すごく「嬉しいテーマ」じゃないですか。しかもその子は「メロディ・ラヴ」になってくれる上に、愛美を助けるのを手伝ってくれたりもするんですよ!あ、誤解の無いように言っておきますが別にコスチュームが嬉しかったんじゃなくて「馬鹿やっても付き合ってくれる」のが嬉しいんです。しかも、あとのシナリオでは見事立ち直った「お茶目なお姉さん」になって再登場。ポイント高過ぎです。それにしても、描写さえしなければPSでも、その、そういう関係になった事を匂わせても良いんでしょうか?
 ああ、それから。先ほど減点された彼女はこのシナリオで失地を挽回すべく、「理由は内緒だけど、温泉旅行にいけるかも」、とか「短冊に私の名前書いてね」とか、可愛らしさを装備してきました。ですが残念。相手がカミィではいかにも分が悪い。折角アヒル声にも慣れてきたんですけどねえ。
補足:ようやく明確に「敵」と認識できる刺客が現れましたね。マッキー、君の論撃能力はともかく、愛美を抱き込んだりカミィに心理攻撃を仕掛けたりとなかなかに小技を披露してくれます。君のおかげでカミィの思いを聞く事が出来ました。感謝。

4) 愛と青春のラブラブショー

 コントローラーをどこかに放り投げたシナリオです。っていうか、青野さん、あなた、ちょっとと言わず相当変だよ…。しかも修羅場での愛美の「これがゲームかなんかだったら………究極の選択だよ!」っていう台詞は少々やり過ぎでは?まあ、このシナリオの価値は彼女らと言うよりは寧ろ我が永遠のライヴァル、誠意の味方ゴ〜ジャス・ラブこと幸長さんの登場にあるのでしょう。財力を振りかざす悪い癖さえなければ主人公よりいい人そうだし。なんとなくからかうと面白いし、好感度+1です。ああ、あと「手をつないで逃げる」の選択肢を選んだ後の愛美は結構可愛かった気がします。あれ、ひょっとしなくても頭の中で愛美の比重が上がっている?なお、「幼稚園児達の前でキャット・ザ・ティーチャーの胸をもみ倒した挙句、愛美の手をとって逃亡」というのは人として最低ですね。やってしまいましたが…。最低。
補足:青野さんエンドの「お帰り、キャット・ザ・ティーチャー」の選択肢のあとのリアクションは良いですね。この人はエピローグを見て好感度が上がりました。

5)愛は花火とともに咲け!

  色々な方の御推薦のシナリオです。珍しい、というか唯一ヒロインが3人いるというシナリオです。推薦の理由は多分にあの双子の魅力なのでしょうが、僕はこのシナリオの意義は「愛美のプレイヤーへの強力なプッシュ」に有り、かと思うのです。特に、せっちゃんとのバイクでの突発的なデートのあと、家にある手料理&寂しそうな置き手紙!或いは約束を守った時の家庭的な姿!止めに、ぼろぼろになっても主人公に逢う為にやってくるその態度!!もう完璧です。このシナリオで突如ヒロインとしての株は暴騰、一時は3万円台を突破(?)という勢いです。
  逆に、といってはなんですが、実は僕はせっちゃんがあまり好きになれません。いえ、不器用な少女というのは僕はかなり好みです。が、自分にむかってきた好意を妹とすりかえてしまうような事をするのが耐えられないのです。そんなことして誰が幸せになるんでしょうね?こと恋愛は「There's no points for second best」な世界、二着以下に価値なんか無いんです。勝者は勝者らしく勲章を受け取っておけば良いのに、人に譲られた恋など辛いだけなのに。そのくせ、今回だけは妹に譲れないと言う。久美ちゃんは落穂拾いですか?そういう事をするから、以降のシナリオで二人の間がギクシャクして来るのだと思うのです。もっと早くに対等の関係にある事が出来れば…。
  …ふう。少々感情的ですね。それにしても香織が「くる」までの5つのシナリオで、僕は説明書の「なぜか主人公はモテモテ…本当の愛を貫けるのだろうか?」の上っ面の部分と言うか、甘い部分しか見ていない気がします。何と言いますか、主人公が本当の意味で葛藤していない。「愛美と彼女、どちらを取ろう?」という悩みが今一つ感じられないのです。そういうわけでここまではキャプテン・ラヴを、いわゆる「ラブコメゲーム」というバイアスを外さずに見ることが出来なかったんですが、そのバイアスは次のシナリオでこなごなにされるのでした…。
 補足:鷹取最低。論撃をしかけてきたのは貴様だろうに!

6)愛と喝采のラプソディ

  ついに来てしまいました。彼女のシナリオが。香織が本心をさらけ出す瞬間が「痛い」のは予想通りだったのですが、それに加えて杉江による事後説明が効いた…。杉江も香織も愛美も、主人公の問題を片付けない限り仲良し4人組でいることは出来ないことが判っている。判ってないのは主人公だけ。それが判った時の「俺は馬鹿だッ!」と叫びたくなるような気持ち。そのやる方ない気持ちを杉江とキャプテン・ラヴに叩きつけて、更に惨めな気分に(プレイヤーは)なっていき…。感情移入スタートです。
  香織がキャプテンの正体を明かしてしまう事については賛否両論ありそうですが、僕はあれで良かったかなあと思うのです。ああいう機会でもないといつまでもキャプテンは俺だ!と言う事は出来なかっただろうし、それをしない限りは愛美を取り戻す事は出来ないわけだし。或いは香織が言わなかったとしても、ラブラブ党の刺客の誰かがいずれ「武器」として正体を明かしにかからないとも限らない。それだったらセカンドベストくらいの状況なんじゃないかと思うのです。良くも悪くも、香織の暴走は主人公と愛美が本気で向き合うきっかけになってくれた、と。それまでの彼らはお互いに何を考えているかわからない(愛美はあんなだし…コホン。自分からラブラブ党の虜囚になってしまうし、愛美からしてみれば自分をいつまでたっても助けてくれない主人公に不満なり疑念なりがあるだろうし)けれど、その辺を分かり合う為には腫れ物に触るような態度でいるわけにはいかない。その辺がクリアになったから次回以降のシナリオでは話し合い…というか言い合いが増えていく。まさに「魂の成長」に必要な試練です。
  このシナリオに一つだけ「これはないだろう…!」と思うところがありまして。というのは、ラストで香織が泣きそうになりながら主人公の部屋にやってきますが、何故なにゆえに彼女は着ぐるみのままなんでしょう?がっくりです。
 補足:以前ラブラブ党軽音部員を論破した時に放った台詞がことごとく自分に帰ってきました。全くどの口があんな台詞を吐いていたのでしょう?愛美が論撃をして「口先ばっかり」というのを咎められません。

7)愛のサプライズドアタック!

  …ついに来てしまいました。…彼のシナリオです。…多くを語りたくはありません。開幕からあれだし選択肢如何によっては美智先輩とあんな事になってしまうしラブセイバーズ磯田は背筋で語り始めるし…もうたくさんです!
  きれ終わったところで。辻海さんの台詞「僕達も人間なんだ〜僕達は精神的にタフだから」の辺りは、高校時代の同性愛者の友人も似たようなことを言っていたなあと思い出しました。実際、もっともな話だとは思いますよ。自分が関わらなければ。どれだけ筋が通っていても、分かり合えない事はあるものです。
  このシナリオの辛さは美智先輩のみならず、これまで振り払ってきた彼女達の怨念(?)との対決にもありました。前のシナリオで血を吐く思いで香織を拒絶したのに夢の中であんな台詞を吐かれた日には…胃薬が必要です。他にも冷静な顔で恐ろしい事を言って来る大人の2人とか、モスラの小美人張りにユニゾンで攻め立ててくるあの双子とか、なによりも顔を合わすなり「ごめんなさい!」と避けていくのどかとか火力は十分です。でもまあ、やっぱり何度も選択肢を要求される香織の悪夢は格別でした。
 補足:芹沢嘉門がなんとなく芹沢鴨とイメージがかぶって見えたのは不思議でした。それにしても、局長を名乗る事といい、川沿いを攻めて来るところといい、ラブ・セイバーズは京都向きの部隊ですね。

8)愛のラストチェンジ!

  前のシナリオの辛さのあまり、忍さんがとばっちりを食いました。攻略する気力が沸かない…。結果、唯一彼女だけは解いていません。だから彼女の本意がどこにあったのかが今一つわからない。ただ一つ言えるのは「公衆の面前で変なマスクをかぶって自分の娘を磔にするような人物は人として間違っている」という事です。え、忍さんと関係ない?良いんです。印象に残ったのは変態パパの姿だけです。まあ、後はやっと愛美の前で変身できた主人公と変身を受け入れた愛美の姿に安堵を感じました。「やっと報われた…。長かった」と思わず呟いてしまいました。それにしても幸長さん、貴方負けすぎ…。

9)愛の大団円

  カイゼル硬すぎ!10以上の失態を冒してなお論撃を続けるとは…。神経の太さは論撃に必須の能力なのかもしれません。特に言うべき事はないので、ここからはよしなしごとです。まず、ゴージャス・ラブ誕生について。結局佳美さんは愛美と引き合わせたものの、幸長さんでも不足だと思ったんじゃないでしょうか?だから敢えて嫌われるように幸長さんをヒーローに仕立てた、と。これで近頃愛美の近くをうろつくキャプテン・ラヴと潰し合ってくれれば一石二鳥よ!とか。…人、悪過ぎですね。
  もう一つはラブラブ党について。彼らは種の保存と貞操概念の両立をどうやってするつもりなんでしょう?シングル・バニーの表現を借りれば「全ての人々にラブを注いだ結果、出生率が高くなりすぎて食糧問題、土地問題が限界を越えて世界は滅びてしまうわ!」とか言いたくなります。下世話ですが、根本的な問題でしょう?この作品が良くも悪くも「ラブコメ」なのはこの高邁な思想を掲げながら実際は「愛の落伍者達が群れ集まって度を越した親ばかに付き合っている」というこの集団のためでしょう。軽音部員然り、マッキー然り、キャット・ザ・ティーチャー然り、シングル・バニー然り、サラリーマン部隊然り、ラブ・セイバーズ磯田然り、そして誰よりもカイゼル・ラブ然り。みんな、愛の構築に失敗した人間ばかり。正直、ラブラブ党の党議に頭を染める事は、新たな恋の機会を自ら失いに行っているように見えるのですが…まあ、彼らはその喜びを得る事よりもその痛みを受けないことを第一に考えるのでしょう。何というか、いずれ党内にもティターンズみたいな存在を作り出す空気、ありそうですね。基本的に愛の落伍者達が集ってくる集団なのだから、同じ傷を持った人間は沢山いるわけで、そうなってくると傷を舐め合った挙句「禁断の党内カップル」とかも出来かねない。そうなると愛のプロレタリアート集団の中にすらプチブルが生じてしまう事になり、残された者達の心の傷から愛のプロレタリアート革命は激化の一途を辿る…というシナリオ、、ありそうじゃありませんか?

 ええと、締りは悪いですが「DMの元ラブ・キャバリアーズNo.1体験記録帖」この辺でお開きにさせて頂きます。長々とお付き合いいただきありがとうございました。…良いゲームでした。

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